町田啓太、世界からの反響を実感し「希望を持てました」――連ドラ初主演でバーテンダー役「西荻窪 三ツ星洋酒堂」インタビュー

東京・西荻窪の片隅にひっそりとたたずむ1軒のバー。バーテンダー、シェフ、オーナーの3人で営業する小さなバーへ、今日もさまざまな悩みを抱えた人が足を踏み入れてゆく。そこでぽつりぽつりと思いの丈を吐き出すと、再び扉を開ける頃には、少し前を向けるようになっている――。

2月11日にスタートした連続ドラマ「西荻窪 三ツ星洋酒堂」(MBSほか)。この物語の主人公・バーテンダーの雨宮涼一朗を演じる町田啓太さんは、本作の原作に触れた際「雨宿りのような物語」だと感じたという。

なかなか気軽に集い、語り合うことが難しくなってしまった今の時代。「画面越しにはなりますが、ぜひ立ち寄ってみてください」と呼び掛ける町田さんは、本作が連続ドラマ初主演。

「純粋にうれしく思っています。一番作品に長く、多く、深く関わらせていただく役柄にチャレンジできるのはすごく楽しみで。作品の柔らかい雰囲気も大切にしながら、自分なりに雨宮という人物の面白さを出せるよう頑張りました」。

漠然とした不安を感じていたり、モヤモヤして気持ちが晴れないお客さんの心をゆっくりと解きほぐしていく雨宮。初の連続ドラマの“座長”を務めることに気負うそぶりは見せず、「雨宮は、なぜ人に対してあんなに柔らかく、丁寧に気遣いができるんだろうと考えていたんです。それはたぶん、自分と話したことによって相手が今よりも少し前を向くことができているのを見て、雨宮自身も自分の価値を見いだしているんじゃないかなって。裕福な生活を送ってきた雨宮ですが、彼なりに思うところがある中、彼の魅力である“柔らかさ”は大事に演じていました」と、じっくり役に向き合った様子を伺わせながら、穏やかな笑顔を見せる。

ホッと気の休まる、誰かにとっての“居場所”を作っているのは、雨宮を加えた3人の男性。1人は藤原季節さん演じる味覚を失った無口なシェフ・中内智。そしてもう1人は、森崎ウィンさん演じるこの店のオーナー・小林直樹。実は高校の同級生だった3人だが、当時は仲が良かったわけではなく、大人になってから再会したという間柄。

「お二人とも、初めて共演させていただきました。季節くんは、実年齢は彼の方が少し下になるんですが、話していて全く年下感がないというか…。すごくしっかりしている、真っすぐな方です。ウィンくんとは、実はこの作品に入る前、たまたまバラエティー番組でご一緒して。その時に『同い年なんだね』『いつか、一緒に何かできたらいいね』と話していたので、今回ウィンくんの名前を聞いた時は楽しみで仕方がなかったです。彼、飛行機が大好きみたいなんですけど、僕も高校時代に航空学校に通っていたので、自然と話が盛り上がって、すぐ打ち解けることができました。お二人ともすごく温厚な方なので、このドラマの雰囲気にすごく合っていると思います。バーで3人がそろうシーンは、楽しんでもらえると思いますよ」と、確かな手応えをのぞかせる。

既に放送を終えた第1話では、美しい所作でカクテルを作るシーンも。味はもちろんのこと、雰囲気でもお酒を味わいたい「バー」という空間は、とてつもなく奥深い。自然で優美な振る舞いを披露していたが、撮影本番は「内心、ドキドキしていました(笑)」と、どこまでも謙虚だ。

「カクテルは、自分で作ったことがなくて…。世界でも有名なバーテンダーの方に教えていただいているんですが、ちょっとした所作もすごくお奇麗なんです。そしてそれは全て、お客さまに対する心遣いなんですよね。例えば、グラスを持ったり差し出したりする時は、なるべく口元から離れた下の方を持つとか…。一つ一つに理由があるし、すごく大切なことばかりなので、しっかりできるようにしたくて家でも練習して。現場でも『大丈夫ですか?』と細かく確認しながら、撮影させていただきました」。

普段は、華やかなところよりもアットホームな雰囲気のお店に惹(ひ)かれるという町田さん。最近は機会が減ってしまったが、バーという場所は「『気分転換しに行こう!』と意気込んで行くというより、『ちょっと休憩しに行こう』というイメージ。カウンターに座ってお店の方と少し会話をすることや、ほかのお客さんがいることで生まれる空気感が面白くて、思い返すと、そういうのを求めて行くことが多かったかなと思います」と、そう遠くない過去を思い浮かべる。

2020年、世界は思いも寄らない事態に包まれた。そんな中、数々のエンターテインメントが発信することを諦めず、人々に笑顔や勇気を届け続けた。町田さんはこの年、5本のドラマ、3本の映画に加え、2本の舞台に出演。中でも「チェリまほ」ことドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(テレビ東京ほか)や「今際の国のアリス」(Netflix)は日本だけにとどまらず、その人気は全世界に広まっている。さらに2019年に発売されたファースト写真集「BASIC」(光文社)は発売から1年を経て増刷され、アジア各地の書店にも出荷された。昨年12月には、5刷5万部を突破したという。心境の変化を伺った。

「(心境の)変化はやっぱり、すごくありました。たくさんの方に見ていただけているんだなって感じることができましたし、『楽しい!』というお声もいろんなところからいただいて、本当に勇気をもらえました。直接言葉を掛けてもらえるのもうれしいですし、逆に直接ではなく、知人の方を通して感想を伝えてくださるのもうれしくて。『誰かを通してでも伝えたい』っていう、その気持ちがうれしいですよね。SNSでコメントをいただいたりもして、本当に『皆さんに楽しんでもらえているんだな』という実感が湧きました」。

海を越えて会いに行くことはまだ難しい世の中だが、SNSなどでは海外のファンの声も届く。日本のファンと海外のファンでは、反応に違いはあるかを問うと「海外とか日本とかはあまり関係なくて、たぶん人によるのかなと思います(笑)。ただ海外の方は、日本語で、字幕なしで見ている方は少ないかもしれないんですけど、それでも楽しんでくださっているというのはなんか……すごいことだなと思います。海外での人気を、日本の皆さんが一緒に喜んでくれているのもすごくうれしいです。作品を楽しんでくれることに垣根ってないんだなって思いましたし、今後も垣根なく作品を作れたらいいなって。希望を持てました」と控えめな言葉を口にしながらも、キラキラと目を輝かせた。

2021年は、さらなる飛躍を遂げるだろう。2月14日からスタートしたNHK大河ドラマ「青天を衝け」への出演も発表されたばかりだ。本作の原作を「雨宿りのような物語」と表現し、「土砂降りの雨の中でもどこかでちょっと雨宿りすると、少しホッとする感覚があると思います」と言葉をつづった。多忙な町田さんにとって、「雨宿り」できる場所はあるのだろうか。

「地元の、古くから自分のことを知ってくれている友達と一緒にいる時間は雨宿りだなって思います。場所でいうと、やっぱり地元。気分転換というか、ちょっと自分を顧みることができたり、初心を思い返せたりするんです。僕にとって大事な時間、大事な場所ですね。友達とは、ご飯に行くことも好きなんですけど、中でも好きなのは…温泉ですね(笑)。すごくゆったりできるし、開放的な気分になって、いろいろしゃべれちゃうんですよ(笑)。そんな時間がすごくいいなーって思っています」。

【プロフィール】

町田啓太(まちだ けいた)
1990年7月4日生まれ。群馬県出身。かに座。O型。劇団EXILEのメンバー。主な出演作は、映画「きみの瞳が問いかけている」、NHK連続テレビ小説「花子とアン」、ドラマ「女子的生活」(NHK総合)、NHK大河ドラマ「西郷どん」、「中学聖日記」(TBS系)、「ギルティ ~この恋は罪ですか?~」(日本テレビ系)、「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(テレビ東京ほか)、「今際の国のアリス」(Netflix)など。テレビ東京と「めちゃコミック」によるコラボコンテスト「僕を主人公にした漫画を描いてください!それをさらにドラマ化もしちゃいます!!」では、主演・審査員を務める。放送中のNHK大河ドラマ「青天を衝け」に土方歳三役で出演する。

【番組情報】

ドラマ特区「西荻窪 三ツ星洋酒堂」
MBS 木曜 深夜0:59~1:29
tvk 木曜 午後11:00~11:30
チバテレ 金曜 深夜0:00~0:30
テレ玉 水曜 深夜0:00~0:30
とちテレ 木曜 午後10:30~11:00
群馬テレビ 木曜 午後11:30~深夜0:00

<配信情報>
見逃し配信:TVer、MBS動画イズム、GYAO!
見放題独占配信:TELASA、auスマートパスプレミアム、J:COMオンデマンド、milplus

取材・文/宮下毬菜

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