田中将大、独自調整で20日の初実戦へ 石井監督も認める“闘牛士”の緊張感

楽天・田中将大【写真:荒川祐史】

「ブルペンでも闘牛士のような緊張感を持ち合わせる特別な投手」

楽天に8年ぶりに復帰した田中将大投手は今季初実戦となる20日の日本ハムとの練習試合(金武町ベースボールスタジアム)に“ぶっつけ”で臨む。

プロ野球のキャンプでは、若手を中心に、ブルペン投球、フリー打撃登板、シート打撃や紅白戦への登板、その後オープン戦・練習試合など対外試合への登板と段階を踏んで調整していく投手が多い。ベテランであっても、たとえば昨年、西武に14年ぶりに復帰した松坂大輔投手が、宮崎・南郷キャンプ最終日の2月19日に初めてフリー打撃に登板し、同25日の実戦初登板(韓国・斗山との練習試合)につなげたように、フリー打撃登板を調整に取り入れる投手はいる。

しかし田中将の場合は「そもそも投手は相手バッターに打たせないことが仕事ですから、フリー打撃やシート打撃のような“打たせる練習”は好きではないそうです」とチーム関係者は話す。

これまでのブルペンでも、実戦を想定して球種とコースを細かく予告。思い通りにいかない時には「んぁー!」と大声を上げて悔しがることも多い。こうして生み出される張り詰めた空気を、石井一久GM兼監督は「まるで闘牛士のように、バッターと対峙する時の独特の緊張感を、練習の時からしっかり持ち合わせている特別な投手」と表現している。

石井監督「キャリアのある人にはある程度、自分の調整を優先」

自身も現役時代にNPBで18年間、メジャーでも4年間活躍した経験から「僕もメジャーのトップのすごい選手と対決する時には、そういう雰囲気を感じた。ブルペンでは、ポワンとした空気を醸しだす投手もいる中で、ああいう緊張感はなかなか出せるものではない」と語っている。

“ブルペン”とはもともと、闘牛場で出番前の牛を囲っておく場所を指すのだから、本来的な意味では、田中将が漂わせる空気の方がふさわしいとも言える。こういうタイプの投手に“打たせる練習”は似合わないかもしれない。

石井監督は「目の前に(防御用の)ネットを置いて投げるのが嫌だと言う人もいるし、打撃マシンの隣で投げるのが嫌だという人もいる」と、様々な“感覚”を持つ投手がいることを言及し「人それぞれの調整なので、新人に選択肢は与えないけれど、キャリアのある人にはある程度、自分の調整を優先してもらおうと思っている」と明かした。

今季の楽天の先発投手陣は、田中将(日米通算177勝)、涌井秀章(通算144勝)、岸孝之(同132勝)、則本昂大(同85勝)がそろい、通算538勝ローテと呼ばれている。キャリア豊富な“四天王”が、それぞれどんな調整法を持っているかに注目するのも面白い。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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