“自分らしい髪”で一歩踏み出すすべての人を応援「#PrideHair」担当者に聞く、パンテーンがLGBTQ+にフォーカスした理由

「あなたらしい髪の美しさを通じて、すべての人の前向きな一歩をサポートする」ことをブランド理念として掲げるパンテーン。2018年からスタートした#HairWeGoキャンペーンでは、校則や就職での“髪”における同調圧力などをテーマとして取り上げ、社会通念上“当たり前”とみなされてきた物事に対し、新たな価値観を創造することへ大きく貢献してきた。

そして昨年から、LGBTQ+の就職活動をテーマにキャンペーンを展開。公開された、二名のトランスジェンダー当事者が自身の就活体験を語った動画は一週間で2000万回以上再生され、 画一的な就職活動の在り方を社会全体で見直すきっかけにもなった。

「#PrideHair」と題されたこのキャンペーンがいかにして生まれ、今後どのような展望をしていくのか。昨年12月、発表されたばかりのプロジェクト「#PrideHair サロン」についても、P&Gインターナショナル オペレーションズ シンガポールAPAC ヘアケア フォーカス・マーケット シニア ブランド ディレクター大倉さんに話を伺った。

* * * * *

自分を偽る髪ではなく、個性を表現する髪へ。LGBTQ+当事者と向き合う中で形となった#PrideHairプロジェクトへの想い。

――服装、髪型、姿勢…性別で異なる“就活スタイル”が求められる風潮が強い日本の就職活動。このことについて問題意識が生まれたきっかけを教えてください。

2018年の「#就活をもっと自由に」、そして2019年の「#令和の就活ヘアをもっと自由に」といった、#HairWeGoキャンペーンの一環として就職活動に焦点を当てたプロジェクトを進める上で、これまで多くの就活生と向き合ってきました。

そういった中、印象に残っていたのがLGBTQ+就活生の不安や悩みの声です。どのような点において、不安や悩みを抱いているのか詳細に知るべきだと考えた私たちは、まず当事者の方にお話を伺うことからはじめました。さらに、LGBTQ+元就活生を対象としたパンテーン独自の調査も行ったところ、全体の76パーセントのLGBTQ+元就活生が「選考に影響が生じるかもしれない」といった理由から、就職活動の時にセクシュアルマイノリティであることを隠しているという結果が浮かび上がってきました。

調査結果や、LGBTQ+元就活生との対話を踏まえ、理解を深めていく中で分かったのが、LGBTQ+就活生の多くが抱えている「ロールモデルがいない」というインサイトでした。また、インタビューを重ねる中で、「“髪”こそが自分らしさを表現するためのきっかけになるのではないか」と思い、「LGBTQ+当事者の方たちが、自分らしい髪で自分を偽らずに就職活動ができるように」という願いをこめて始めたのが、#PrideHairプロジェクトです。

トランスジェンダーのお二人に、就職活動の時の体験談を語って頂いた動画には、多くの共感と賛同の声をいただきました。強い想いを持って、参加していただいたお二人の想いが多くの方に届いたのだと思います。今後も、#PrideHairを通して、誰かが自分らしく生きる一歩を踏み出すきっかけのお手伝いができれば、と考えています。

――こうしたキャンペーンが社会の注目を集める一方で、ヘアケアは男女問わず現代の日常に根付いた習慣であるのにも関わらず、プロダクトのPRでは女性モデルが多く起用されています。この点についてはどのように思っているのでしょうか。

ヘアケア商材のビジュアルで女性モデルを起用することは、現時点ではまだまだ業界のスタンダードとされています。一方で、世の中全体では「多様な美しさ」を尊重する潮流になってきており、パンテーンでも過去の広告キャンペーンにおいて、「自分らしい髪」を体現するアイコンとしてりゅうちぇるさんを起用しました。今後もブランド理念である「あなたらしい髪の美しさを通して、すべての人の前向きな一歩をサポートする」をテーマに、ジェンダーにとらわれず様々なチャレンジを続けていきたいです。

すべての人にとって、ヘアサロンがサードプレイスとなるように。髪を通してその人らしさを表現できる社会を目指す、新たな取り組みとは?

――ここ数年の取り組みが、より社会から注目を集めていますが、P&Gでは何年前からダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを行っているのでしょうか?

P&Gは1992年から25年以上に渡り国籍、性自認などを超えた「ひとりひとりの違い」を尊重する組織づくり、多様性を尊重する文化を支えるための制度に加え、社内研修などを行うことで、個人の多様性を積極的に活かす「インクルージョン」スキル向上に取り組んできました。

採用活動においても2014年には、エントリーシートの写真欄を削除し、2019年には性別欄に「その他」を設定するように変更しました。さらに、2021年には生年月日情報を削除することで年齢によるバイアスがない状態での採用活動を行う予定です。

また、社内での取り組みだけでなく、2020年には婚姻の平等(同性婚の法制化)に賛同する企業を可視化するための「Business for Marriage Equality」にも賛同をしています。お互いを尊重し受け入れることで、誰もが安心して自分らしくいられる世界を育むことが私たちの願いです。

――去年から「#PrideHair・サロン」というヘアサロンとの新しいプロジェクトもスタートしましたね。

#PrideHairプロジェクトを通して、多くのポジティブな反響と共感の声をいただきました。一方で、「就活において、セクシュアルマイノリティの課題があることに初めて気がついた」、という声も多く頂き、更にこの活動を広げていくことの必要性を感じました。

そのような中、LGBTQ+の方々から「ダイバーシティに配慮した美容室が増えて欲しい」という声をいただくと同時に、ヘアサロンで働く多くの方々より、プロジェクトへの賛同の声をいただきました。そこで、ヘアケアブランドであるパンテーンだからこそできることはないかと模索し、立ち上げたのが、この『PrideHair・サロン』プロジェクトです。

――このプロジェクトを通してヘアサロン業界ひいては日本社会へとアプローチしたいことを教えてください。

日本全国の美容サロンの数は25万店舗(*1)を上回り、更に日本人のヘアサロンの利用頻度は2~3か月に一回と言われています(*2)。この場所が、日本で11人に一人(*3)いるというLGBTQ+の方々にとっても居心地がよく、自分らしい髪になれる場所になれば日本全体が、より多くの方の個性が輝く社会へと変わるきっかけになるのではないかと考えています。

#PrideHair この髪が私です。「ふたりの元就活生が、いま、伝えたいこと。」 PANTENE (パンテーン)/Full Version

■ #HairWeGoキャンペーン公式サイト
■ 公式Twitter@PanteneJapan
■ #PrideHair・サロン/マニュアルのダウンロード

取材・インタビュー/芳賀たかし
画像提供/パンテーン
記事制作/newTOKYO

(*1)参考:衛生行政報告例(厚生労働省2019年発表)/(*2)参考:美容センサス2020年上期(株式会社リクルートライフスタイル ホットペッパービューティーアカデミー)/(*3)参考:LGBT調査2018(電通ダイバーシティ・ラボ)

© 株式会社amateras