長崎県の五島列島にこの春、コンビニ大手「ローソン」の看板が掲げられる。本土では当たり前の存在だが、今まで島になかったサービスも新たに提供される。島民の生活を変えてきた島の「コンビニ史」をたどった。
◇行 列
五島列島に初めて24時間営業のコンビニができたのは、1999年12月8日のことだ。場所は、当時の新魚目町(現新上五島町)浦桑郷にある商店街。九州を中心に展開するチェーンのフランチャイズ店「RIC浦桑店」として開店した。
RIC当時から列島内でコンビニ経営を手掛ける同町のドゥイング(旧かましん)によると、浦桑店は県内の離島で初めての24時間営業店舗だった。開店を伝える本紙記事は、オープンを待つ人の行列ができたことを紹介しており、島民の期待の高さがうかがえる。
約1年半後の2001年8月1日には、福江市(現五島市)木場町にも「RIC福江木場店」が開店し、上・下五島地区に24時間営業コンビニがそろった。出店は続き、14年時点で五島市に6店舗、新上五島町に2店舗のRICがあった。
◇変 化
その後、RICブランドを展開していた「ココストア」が「ファミリーマート」に買収されたことなどに伴い、ドゥイングは新たに「ポプラ」と契約。店内で炊いたご飯をよそう弁当「ポプ弁」などが人気で、両市町には17年までに現在の計7店舗(五島5、新上五島2)ができた。
この時、島の暮らしに大きな変化が生まれた。24時間利用できる現金自動預払機(ATM)の新設だ。それまでも銀行ATMは島内にあったが、夜間は閉鎖されていた。ドゥイングの道津一政専務(36)は「島にはクレジットカードが使えない店も多かった。飲み客や観光客がいつでも現金を下ろせるようになり、利便性は格段に上がったのではないか」と語る。
◇物 流
両市町では4月以降、ポプラが改装されるなどして計8店舗のローソンが出店するが、これまで大手コンビニの島内出店が難しかった要因の一つに、物流の問題がある。本土から商品を輸送するには船を使わざるを得ずコストがかさむ上、品質を保ちながらアイスや冷凍食品を運ぶことも困難だったという。
ドゥイングはローソン側との契約を目指す中で、島内で営むグループ事業所のスーパーやホームセンターの商品と組み合わせて運ぶことなどで、コストを抑える見通しを立てた。今後は人気の「からあげクン」や各種スイーツなど、テレビCMで紹介される商品が島でも買えるようになる。
ローソンでは政府の飲食業界支援事業「Go To イート」の食事券も購入でき、道津専務は「五島の飲食店にもメリットが生まれれば」と期待。その上で「これまで『都会の当たり前を五島の当たり前に』を目標にしてきた。五島列島でさらに2店舗増やし、計10店舗を目指したい」と意気込んだ。