「年下夫」を選ぶ女性はどれくらい?年代によって割合に大きな差が

筆者はデータ分析から事実を読み解く姿勢を大切にしているため、できるだけ結婚や出産というライフイベントに対して「きっとこうでしょ」という感想は持たず「まずデータはどうなっているだろう」と分析してから結論を考えるようにしています。

「女性っておしゃべりだから会議が長くなる」という、国際的に大炎上したオリパラ発言ではありませんが、実はどんな人にも、自らの経験や、データに基づかない思い込みで全てを語ろうとしてしまうアンコンシャスバイアス(潜在化している偏見)な面はあるのです。


ある講演会で出た「こんな婚活女性ってどうなの?」という質問

「人の振り見て我が振りなおせ」ではありませんが、今回はある講演会で出た次の質問に自省もこめてデータ分析結果をお示ししてみたいと思います。

「先生、婚活中の40代女性が、子どもが欲しいからといって、年下の男性を希望するのですがどう思われますか?」

おそらくこの質問は、男性が自らの年齢が上昇しても若い女性に固執するために成婚にどんどんつながらなくなっていく、という発表に対し、「女性だってそういう方はいる」と言いたかったのではないかと感じました(質問者の経験からくる純粋な疑問として)。

その際に、年下夫との成婚は20代女性で最も多い、という回答をしました(図表1)。

しかし、この回答は「20代男女の結婚が圧倒的に多い」ということを言いかえているだけで、女性の年齢が上がるほど年下夫を持てなくなるのか、という回答にはなっていません。

そこで、成婚に至った各年齢の女性が一体どれくらいの割合で年下夫と結婚しているのか、講演会での説明不足の反省を込めて、結果を示したいと思います。

なんと年下夫割合は30代からは4割超

今回使用したデータは、厚生労働省「人口動態調査」の2018年婚姻データ(初婚同士/同年に入籍し結婚生活に入ったカップル全件)です。
図表2は縦軸が初婚女性の年齢ゾーン、横軸がそのお相手となった初婚男性の年齢が下である(年下夫)割合となっています。

筆者も自分で分析しておいてびっくり仰天、といったところなのですが、20代女性までは2割までに収まっている年下夫との成婚の割合が、30代前半からは35%、39%と4割に近づいていきます。40代では43%、46%と4割を超え、60代前半で一度4割を切るものの、それ以降は圧倒的に年下夫を持つ初婚女性が多く、年上妻だらけ、ということがみてとれます。

ただし、データの見方の注意点として、60代後半以降(年下夫割合が激増)、男女の寿命が関係してくることを考慮しておきたいところです。
男性は女性よりも寿命が短いのです。
厚生労働省「簡易生命表(令和元年)」によると、2019年の日本人の平均寿命は男性が81.4歳、女性が87.5歳と6歳以上の差があります。つまり同じ年齢で結婚しても、男性の方が早く他界してしまうという悲しさがあるために、65歳以降は男性が減少し、お相手人口数的に年下男性から選ばざるを得ない、という話になります。

60歳以上はそもそもの男女の母数差が大きくなってくるため(50代まではほぼ同数です)除外して考えることとしても、男性も女性も変わらず、年齢上昇とともに成婚相手には年下を好む傾向があることが示されているとともに、「でも、年下と結婚できるのは中高年男性の話であって、中高年女性には無理な話だろう?」というのは私たちの思い込みである、ということも示されています。

もちろん、男女とも30代後半からは成婚自体が確率的に非常に難しくなるのですが(図表1ならびにニッセイ基礎研究所HP公開レポート「ニッポンの結婚適齢期」参照)、少ないながらも成婚に至った女性をみると40代では4割以上の女性が年下夫との結婚になっています。

男性だから仕方がない、ではない

同じ講演会で「やっぱり子どもが欲しいからといって、中年男性が若い女性を求めるのは仕方ないのでしょうか」という質問がでました。

同じく子どもが欲しいからかなり年下の相手を、と求めていることに対し、男性に関しては「先生、それは仕方がないのでしょうか」という質問、女性については「どう思いますか」という質問がでるという、皆さんのアンコンシャスバイアスに苦笑いを心に浮かべてしいました。

ここまで読んでいただいて気がついた方は多いかもしれませんが、男女そろって「生殖のためにカップルになる」という動物の本能から考えれば「どっちもどっちで、年を取ると相手に若さを強く求める頭になりやすい」ということです。

医学的データはここでは省きますが、自らの生殖能力は若い時に比べて男女とも落ちます。ゆえに相手にそれについての補完を強く求めるわけです。
そして、それは男性だから女性だから許されますか?という話ではないのです。

「やっぱり子どもが欲しいからといって、中年男性が若い女性を求めるのは仕方ないのでしょうか」という質問には、こうお答えしました。

「仕方がないと考えるかどうかはご本人の覚悟と責任の問題です。ここまでのお話しでデータからはその選択は『いばらの道である』ということはしっかりお伝えしました。仕方ないかどうかはご本人が決めることなのです」

いずれにしても、出産可能年齢の最後にあたる40代女性が、成婚実績としてみてみると若い女性よりも年下夫にこだわって選択した様子が垣間見えています。
この結果からは、

1.妊娠のしやすさ(夫の年齢が上昇するほど妊娠までの期間が長くなる等※)
2.自らの体力が激減する出産後の育児のしやすさ

を考えると、「産む側として」年下男性を求めるのは合理的な選好傾向であるといえます(※齊藤英和,国立成育医療研究センター臨床研究員・公益財団法人1more Baby応援団 理事/心配だからこそ知っておくべき 妊娠・出産の正しい知識 〜妊娠適齢期から考えるライフプラン 全4回 ①【男性編】)。

しかし、年下の男性を選ぶということは、女性の経済力と男性の経済力に大きな格差がある日本において「女性が経済面で腹をくくる」話でもあります。
「養ってくれる年下王子の子どもが欲しい」
そんな発想では婚活が成功しないだろうことも、年下夫を希望する女性は覚悟しておく必要があるでしょう。

男性も女性も関係なく、「物事の都合のいい面だけを主張し、都合の悪い面は見ないふりをする」ことをやめることが、結婚難民にならないために一番大切なことだと思います。

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