田中将、岸から即座に吸収、評価高まる楽天ドラ1早川 同僚「同じ人間とは…」

楽天・早川隆久【写真:荒川祐史】

20日に実戦デビュー、2番手で先発・マー君からリレー予定

楽天のドラフト1位ルーキー早川隆久投手(早大)は20日、日本ハムとの練習試合(沖縄・金武)で初実戦に臨む。先発する田中将大投手の後を受け、2番手として登板予定。昨秋のドラフトで4球団が1位指名で競合し、新人王の最有力候補といわれる左腕に初実戦で求められるものとは何か――。【宮脇広久】

2月1日のキャンプイン後、8度のブルペン投球と1度のフリー打撃登坂をこなした。これまで早川に対する周囲の評価は概ね、アマチュアNo.1左腕の前評判に違わぬものだった。

まずは抜群のコントロールだ。内・外角のいっぱいのコースに投げ切る制球力を披露。「引地(秀一郎投手=高卒3年目・20歳)からは、『どうしてあんなにビタビタ決められるのですか? 同じ人間と思えません』と言われました」と笑う。

一方、ブルペンを視察した他球団のスコアラーは“目”に着目。「マウンドさばきがテキパキしていて、目力が強い。そんなことは関係ないだろうと思うかもしれませんが、ボヤっとした雰囲気の投手は大概、明確なピッチングスタイルを打ち出せないものです。その点、早川君からはセンスの良さ、ぶれない意思の強さが伝わってきます」と断言した。

実際、早川は普段から言語明瞭だ。田中将をめぐるフィーバーを目の当たりにしても「自分もそういう投手になっていきたい」と発言。激化する先発ローテーション争いについても「しっかり競争の中に入っていける選手でないと、今後楽天のエースの座を競っていけない」と臆せず言い切る。自分の性格分析も「基本的に“自己チュー”です。良く言えばマイペースですが、何かを追求し始めると我が強くなる」と明快だ。報道陣から「なぜ、そんなに思ったことを的確に表現できるの?」と聞かれ、「高校(千葉・木更津総合高)時代から取材慣れしているからかもしれません」と答える一幕もあった。

オフの19日も投手練習で汗を流した楽天・早川隆久【写真提供:楽天野球団】

岸からスライダー、マー君からカットを教わり早速自分のものに

さらに、吸収能力にも驚くべきものがある。キャンプ中に岸孝之投手の代名詞であるカーブの投げ方を本人から直接教わり、早速試投。「岸さんから『俺は手首を曲げず、どちらかというと真っすぐを投げるイメージで投げている』とアドバイスをいただき、自分もそういうイメージを加えて投げたら、うまく抜けるようになりました」と早くも手応えをつかんだ。

18日には、田中将のアドバイスでカットボールの改良に踏み出した。「これまで自分のカットボールは、沈んでゴロを打たせる感じでしたが、田中さんに教わったのは、右打者の胸元に食い込んでバットを折るイメージ。握りも教わりました」と目を輝かせる。こちらも手応えが良く「もう少しブルペンで試して、コースの投げ分けができるようになったら、試合で使ってみたい」と言う。

もともと最速155キロを誇る速球を軸とし、変化球も多彩。特に2種類のチェンジアップ(ストライクを取るためのシンカー系と、空振りを取るフォーク系)は、ブルペンで球を受けた田中貴也捕手が「1軍で通用する」と太鼓判を押したほどのレベルだ。さらに同僚の超一流投手に教えを乞い、幅を広げていく姿を見ていると、伸びしろの大きさも感じさせる。

そんな大物新人に、石井一久GM兼監督はキャンプイン直後から「練習試合やオープン戦で結果を出していってくれれば、僕たちはスポットを用意できる」と断言。限りなく開幕先発ローテの1人として計算に入れている口ぶりだったが、そこは実績のない新人だけに、ある程度実戦で結果を残さなければ周囲が納得しない。指揮官は「開幕ローテーションに入れるように、しっかり結果も見せながら、いい調整をしてほしい」と願っている。

「まずは自分の投球をバッテリー、味方の選手に認めてもらえるように、全力で立ち向かっていきたい」と早川。大物ぶりを開幕から披露することができるだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2