
【スポーツ指導 私の提言】
県立高校の運動部顧問から日常的に厳しい叱責(しっせき)を受けていたとされる2年の男子生徒が1月に自殺した問題を受け、バレーボール女子元日本代表の益子直美さん(54)が19日、オンラインで沖縄タイムスの単独取材に応じた。「最悪の事態がまた起こってしまい非常にショックを受けた。私は何とかとどまったが、指導者の暴言は一歩間違えたら死に追い込む。食い止めないといけない」と思いを語った。(運動部・當山学)
自殺発覚の直後には会員制交流サイト(SNS)で「本当に悲しすぎる… 一体いつになったらこのようなニュースがなくなるのだろうか。辛すぎる… 細々と行動してる場合ではないな…」「絶対死んじゃダメ!」などと投稿した。
益子さんは東京の共栄学園高校時代にエースとして春の高校バレーで準優勝し、全日本代表にも選ばれた。当時は指導者による体罰や暴言が日常的にあり、「ミスして怒られるのが怖くて、思い切りプレーできなかった。エースなのに『トスを上げないで』と思っていた」と振り返る。「技術的なことを指導してもらい感謝もしているが、暴言や暴力については否定する」と力説した。
卒業後は日本リーグのイトーヨーカドーに入団したが、25歳で引退するまでバレーボールを楽しめず、50歳が近づいた頃から「『パワハラは良くない』と言えるようになった」という。
現在はスポーツキャスターやタレントとして活躍している。2015年からは「益子直美カップ小学生大会」を福岡県で開催。怒っている監督に「×」を書いたマスクを着けさせ、最優秀賞の代わりに「スマイル賞」を設けるユニークなルールで、スポーツ指導の在り方に一石を投じる。おととしは怒りを制御するアンガーマネジメントファシリテーターの資格も取得した。
沖縄のスポーツ界に向け、「パワハラの指導で実力が上がった選手がいるかもしれないが、私みたいに苦しむ選手もいる。そんな指導者からは離れてくださいと子どもたちに言いたい。周りの大人も子どもを守ってほしい」と呼び掛けた。
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