南野にサウサンプトンは好環境 先輩・麻也の後方支援と好相性の戦術

南野はサウサンプトンで成功できるか(ロイター)

【西川結城のアドバンテージ(25)】日本代表MF南野拓実が、リバプールから同じイングランド・プレミアリーグのサウサンプトンに期限付き移籍した。オーストリア1部ザルツブルクから強豪に完全移籍を果たしたのが、2019年12月。ただ、FWモハメド・サラーやFWサディオ・マネら並み居るライバルからポジションを奪うことは当然容易でなく、さらなる攻撃陣増強によりチーム内での序列は下がっていた。リバプールという名門での彼の挑戦は、日本サッカー全体にとっても希望だったが、選手は試合に出場してこその価値。今回は賢明な選択だっただろう。

あらためて突きつけられるのは、世界最高峰リーグの壁である。これまで何人もの日本選手がサッカーの母国の門を叩き、爪痕を残せず去った者もいれば、活躍が継続できずにリーグを変えた選手もいた。アジアを代表するプレミアリーガーといえば、韓国出身のMF朴智星とFW孫興民。前者は現役時代にマンチェスター・ユナイテッドでリーグ制覇や欧州チャンピオンズリーグ優勝も経験し、後者は現在トットナムでゴールを量産する今やイングランドを代表するストライカー。ライバル韓国のタレントたちが一時代を築いている事実に、悔しさがないと言えばウソになる。

先日、スペインでプレーする岡崎慎司に話を聞く機会があった。15年夏からイングランド・プレミアリーグで4季プレーしたレスター時代の話題に花を咲かせた。加入1年目からレギュラーとしてプレーし、いきなりリーグ制覇を成し遂げた。岡崎はレスターで、決して満足のいく起用はされてこなかった。守備に力を使い、真っ先に交代させられるなど、ストライカーとしての本能を解き放つプレーはなかなかできなかった。「確かに、苦しい思い出もある」。そう彼は振り返るも「ただ、あんなバケモンのような能力を持った選手ばかりの世界で戦い、優勝もできたことは財産」と言う。ドイツでもスペインでも味わえなかったプレミア特有の高揚感が伝わる。

南野は移籍初戦でいきなり得点を挙げ、幸先よくリスタートを切った。サウサンプトンといえば、吉田麻也が約7年半所属したクラブ。英国南部の港街にやってきた後輩に対して「街のことからチームのことまで何でも教えてある。チームメートは僕を見ていて『日本人はいいやつ』と思っているから(笑い)、拓実はすんなり入ってプレーできる」と既に後方支援済み。またハーゼンヒュットル監督のプレッシング&速攻戦術は、南野にとってザルツブルクで慣れ親しんだもの。心機一転。新天地でプレミアの壁を打ち破れるか。環境を整えた今、ここからが勝負である。

☆にしかわ・ゆうき 1981年生まれ。明治大卒。専門紙「EL GOLAZO」で名古屋を中心に本田圭佑らを取材。雑誌「Number」(文藝春秋)などに寄稿し、主な著書に「日本サッカー 頂点への道」(さくら舎)がある。

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