【解説】市民生活に より目配りを

 新型コロナ禍で困難な予算編成を強いられた佐世保市の新年度当初予算案。行政のデジタル化など「コロナ後」を見据えた事業に積極的に予算配分したが、コロナで疲弊する市民生活や地域課題にもっと目配りができなかったか。
 朝長則男市長は、当初予算案を「新しい価値、新たな未来をつくる予算」と表現。各分野でデジタル技術を活用する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進するなど「時代の要請」(市長)に合致した予算を組んだものの、今も続くコロナの経済的影響を手当てする支援策は乏しかった。
 地方創生の重要施策である八つの「リーディングプロジェクト」にも重点配分した。ただ、クルーズ船の入港体制の整備など人の活発な往来を前提にした事業を進めることに対し「批判を受けかねない」と懸念する声もある。コロナ禍でのプロジェクトの在り方と見通しを丁寧に示す姿勢が必要だ。
 コロナ禍は、交流人口やインバウンドの拡大に傾注してきた朝長市政の方向性にブレーキを掛ける結果ともなった。市民生活は今も打撃を受け疲弊している。予算案に反映されていない課題はないか。議会はより丁寧に審査し、活発な議論を求めたい。

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