個人口座はいつも残高ゼロ「お金に無頓着な夫に困っています」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、31歳、公務員の女性。将来を見据えて貯蓄に励む相談者。一方で夫はお金に無頓着で、財布を一つにするのを嫌がり、個人口座の残高もほぼゼロだそうです。金銭感覚をすり合わせるには? FPの高山一惠氏がお答えします。

夫婦でお金の使い方について考え方が合わず、困っています。

夫(社会人5年目)は結婚するまで実家暮らしでお金も入れておらず、給料は丸々お小遣いとなっていたようです。結婚後も別財布でないと嫌とのことで、数年経った今も別財布です。そのため、夫の管理している金額がなんとなくでしか把握できていないのですが、通帳の残高はほぼゼロ、ATM利用手数料も毎月1000円近くかかっており、お金に無頓着な印象があります。持ち株はいくらかあり、企業型拠出年金は毎月5,000円積み立てているそうです。また、ドル建て終身保険で毎月1万積み立てており、30万くらいはありそうです。

妻の私は、結婚前から一人暮らしをしながら貯めたお金と、結婚後のお小遣いやボーナスで貯めたお金が合わせて250万程度、個人年金保険を毎月1万円で積み立てて丸4年、2020年の途中からiDeCoを毎月1万、今年からはつみたてNISAを満額積み立てていく予定です。また、1年前からドル建て終身保険で2本契約し、老後のために毎月9,000円の積み立てと、子どもの教育資金と収入保障がわりに毎月1万5,000円程度の(18歳のときに200万くらいになるように)積み立てをしています。

夫婦共有の貯蓄は、結婚祝いの残金で65万程度です。プラス20万程度ありましたが、家計の補填として少しずつ減ってしまっています。

子ども用の貯蓄は、昨年から始めたジュニアNISAが70万で、貯金が90万くらいあります。毎月5万ずつ貯蓄しており、2023年までにジュニアNISAで毎年80万ずつ積み立てる予定です。大学資金として、少なくとも800万は用意したいと考えています。

家計は基本的に妻管理です。夫は手取り19万5,000円のうち、生活費として11万を家計に入れ、残りが自動車保険(1万)とガソリン代(1万から1万5,000円)、奨学金返済(1万)、クリーニング代(5,000円)、食費(3〜4万)、スマホ代(1年間無料)、ドル建て終身保険(1万)が大まかな内訳です。妻は手取り21万で、夫の11万と合わせて、家賃(8万1,000円)、光熱費(2万2,000円)、日用品(1万)、保険料(個人年金保険1万、ドル建て終身保険×2で2万3,000円、生命保険で4,000円、保育料(4万6,000円)、子ども用貯蓄(5万)、奨学金返済(9,000円)、食費(4万)、iDeCo(1万)、つみたてNISA(2万)が大まかな内訳です。

夫は朝食べず、昼はコンビニ弁当です。妻は、お弁当持参で出勤します。自分だけの分だと手抜きができるので現状助かっているのも事実ですが、無駄に経費がかかることや、コンビニ弁当だと身体に悪いことが気になっており、ミールキットなどの利用を検討中です。

今後のライフプランとしては、夫婦共に65歳まで働く。子どもをあと1人か2人出産(その際は妻が半年から1年間育休取得)。家はできれば注文住宅、金銭的に難しければ賃貸(妻が毎月手当2万7,000円受給)。車は親戚から譲り受けることが多く新車を買う予定はありませんが、故障などのタイミングによっては中古車を購入。

現状ボーナスをお互いに自由に使っていることや、毎月の貯蓄額が少ないことや、夫がお金に対して無関心無頓着なことで、今後どこかで金銭的に困ってしまうのではないかととにかく不安です。夫は老後の不安にまだ現実味が無く、現状が苦しくなるのが嫌な気持ちが強いようです。今と将来のバランスを取りながら、楽しく生活していくためにどのような管理をしていけば良いか知りたいです。

【相談者プロフィール】

・女性、31歳、公務員、既婚

・同居家族について:夫(30歳)・会社員、子ども1歳

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:41万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:140万円

・毎月の世帯の支出の目安:36万円

【支出の内訳】

・住居費:8万1,000円

・食費:8万円

・水道光熱費:2万2,000円

・教育費:4万6,000円

・保険料:4万4,000円

・通信費:4,000円

・車両費:2万5,000円

・その他:奨学金返済2万5,000円、日用品1万円

【資産状況】
・毎月の貯蓄額:9万5,000円

・ボーナスからの年間貯蓄額:60万円

・現在の貯蓄総額:400万円

・現在の投資総額:75万円

・現在の負債総額:奨学金妻50万円、夫100万円くらい


高山:ご相談ありがとうございます。奥様は、将来に向けて堅実に家計管理をされているようですが、ご主人が家計管理に無頓着で自由にお金を使ってしまうことにお悩みのご様子。長い人生の間には、夫婦で金銭感覚が違うと、大きなトラブルになりやすいので、まずは、夫婦でライフプランを共有することから始めてみましょう。

ライフプランを共有する、その際、明るく話すことがポイント!

夫婦で金銭感覚が大きく違う場合、軌道修正するのに有効なのが「夫婦でライフプランを共有すること」です。

奥様は、将来に備えて現在も貯蓄に励んでいらっしゃると思いますが、ご主人と貯蓄に対するモチベーションがかなり違うと思いますので、まずは、この先のライフプランを夫婦で話合い、「何年後までに」「どんなイベントのために」「いくら貯める必要があるのか」を明確にすることが大切です。

その際、将来について明るく話すことがポイント! ご主人がお金に関して無頓着な場合、「将来どうするの!」「子どもの教育費どうするの!」と責めがちになってしまうと思いますが、責められていると思うと、ご主人も逃げ腰になってしまいスムーズに話合いが進められない可能性が高くなります。

ですから、「もう1人子ども欲しいよね。男の子がいい?女の子がいい?」「子どもは将来、留学させたいね」「家は注文住宅にしたいよね」「3年後には、マイホーム欲しいな」など、明るく将来について話すようにしましょう。将来の夢や希望を2人で共有することで、「では、これから、いつまでに、どうやってお金を貯めようか」と、スムーズにお金の話をしやすくなります。

人生の3大資金について

現在の家計を拝見すると、とても堅実に暮らしていると思います。特に大きく無駄遣いをしている項目もありませんし、貯蓄についても頑張っていると思います。共働き夫婦の貯蓄の目安は、手取り金額の2割です。現状でも手取り金額の2割以上は達成できています。
とはいえ、お子さんの教育費や住宅費用、老後のお金などを考えると、このままで大丈夫なのか不安になってしまいますよね。

確かに、「教育費」「住宅費用」「老後費用」は、人生の3大資金といわれ、どれも大きな金額がかかるものです。ですから不安になってしまう気持ちもわかりますが、漠然とした不安を抱えているよりも、かかる金額を明確に把握することが大切です。金額を把握することで、意外に今のままでも大丈夫と思えるかもしれませんし、家計を改善するにしてもどれくらい改善したら良いのか具体的にわかりますので、余計なストレスがかかりません。

教育費は私立?公立?進学プランを考えて

教育費については、基本的に子どもが高校を卒業するまでは、家計から捻出し、子どもが大学に行く場合に備えて、18歳までに300万円から500万円貯めるのが基本セオリーです。現在、既に外貨建て保険とジュニアNISAを活用して大学資金の準備は進めていらっしゃるので、こちらを継続できれば問題ないでしょう。ただし、子どもが今後増えたり、私立の学校を検討していたりする場合には、費用は大きく違ってきます。漠然とでもよいので進学プランを考えてみましょう。公立であれば、毎月3万円から4万円、私立であれば、毎月10万円家計から捻出できるかどうかが、大まかな目安になります。

希望の住宅はどれくらいの価格になりそうか?

また、住宅についてですが、仮に3,000万円の物件を購入するとして、頭金を300万円程度、残りの2,700万円を金利1%で35年間借りたとすると、毎月のローンの返済金額は、約7万6,000円です。そうすると、現在と同程度の住居費用になります。注文住宅を検討されているようですが、具体的にどれくらいの価格になりそうなのか、毎月どれくらいの返済金額になりそうかを考えてみることで、問題なく支払っていけるのか、さらに節約が必要なのかが見えてくると思います。

老後資金はコツコツと運用を

さらに、老後資金についてですが、既にiDeCoもつみたてNISAも始めていらっしゃるとのこと。つみたてNISAは、今年から満額を積み立てる予定のようですね。仮につみたてNISAで毎月3万円を利回り5%で20年間運用することができれば、約1,230万円になります。iDeCoで毎月1万円を利回り5%で運用することができれば、約830万円に(iDeCoは、掛金が全額所得控除になるので、所得税、住民税も安くなります)。両方合わせると、約2,060万円になります。一昨年に金融庁のワーキンググループが出した報告書によると、夫婦で老後生活を送る場合、公的年金だけでは2,000万円足りないと試算されていましたが、今からコツコツ運用していけば、老後のお金も貯めることができます。

もちろん、今後は、お子さんが増えたり、それに伴う奥様の収入の変化があったり、不確定な要素がいろいろありますが、現時点では、必要以上に不安にならなくてもきちんと将来に向けて貯蓄ができていると思います。

現在の家計を「見える化」し、夫にも共有する

将来の夢や目標金額を把握したら、現在の家計の状況をご主人にも把握してもらうようにしましょう。

現在の状況をご主人に見せることで、奥様がかなり努力されていることが伝わるのではないでしょうか。これだけ妻が努力しているのであれば、自分も努力できるところは努力しようと思うかもしれません。また、家計を「見える化」することで、いくらでも使えるという錯覚を取り払うことができるでしょう。

現在はそれぞれで使っているとのことですが、ボーナスの使い方についても夫婦で共有できると良いですね。半分は貯金して、残りの半分は、家族のレジャー代や旅行代に当てるなど、楽しみのためのお金としての予算を確保しておきましょう。ご主人は、今を楽しみたいという気持ちが強いようなので、こうした「楽しみのための資金を確保してあげる」「お小遣いはキープしてあげて口を出さないようにする」など、ご主人の気持ちに寄り添うことも忘れずに。

奥様は、とにかく将来が不安でお金を貯めなくてはという思いで頑張っているようですが、何もかも我慢では、ご主人だけではなく、奥様も途中で息切れしてしまいます。時には家族でレジャーを楽しむ余裕を持ち、上手に気分転換をしながら貯蓄していけるようにしましょう。

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