田中将大、8年ぶり登板で実感した国内マウンドの戸惑い 織り込み済みの計算とは

日本ハムとの練習試合に登板した楽天・田中将大【写真:荒川祐史】

「いろいろ感じることができた、収穫しかない」

8年ぶりに楽天に復帰した田中将大投手が、20日の日本ハムとの練習試合(沖縄・金武)に先発。2013年の日本シリーズ第7戦以来、2666日ぶりに国内で実戦マウンドを踏んだが、中田翔内野手に3ランを浴びるなど2回4安打2奪三振3失点だった。マー君は何に戸惑い、3月26日の公式戦開幕までの調整プランをどう描いているのだろうか。

「(課題は)制球ですね。まだまだ、まだまだ調整段階という感じです」。田中将は降板後、「まだ」を4回も繰り返したが、開幕は約5週間先だけに「こうして実戦のマウンドに上がらせてもらい、いろいろ感じることができたので、収穫しかないです」と言い切った。

一方、「『やるからにはしっかり結果を残したい』と言っていたので、悔しかったのではないですか?」と田中将の心中を推察したのは小山伸一郎投手コーチ。現時点では結果を出すことよりも大事な確認作業があるとわかっていても、打者と相対すればやはり、絶対打たれたくないと思うのが勝負師の性というものなのだろう。

小山コーチによると、田中将はマウンドの柔らかさに「踏み出した足にぐっと力を入れた瞬間に滑る」と苦労していた。「力を入れずにストライクを取りに行った時はそれほどでもないが、決めに行ったスプリットなどは、足元が滑る分、指にかかり過ぎてしまう」と漏らしていたという。

一般に、カチカチに硬いメジャーのマウンドに比べ、日本のマウンドは柔らかく掘れやすいといわれてきた。しかし最近はメジャーに近づいているそうで、小山コーチは「地方球場にはこれくらい柔らかい球場もありますが、(各球団の本拠地は)今はどこもアメリカ式に硬い」と心配していない。

ヤンキースではこの時期「ブルペンでしか投げていなかった」

そもそも田中将のキャンプ合流直後の時点で、石井一久GM兼監督と小山コーチは「今の日本では、この球場のマウンドが1番柔かいくらいだから」と伝えていた。この日の登板を迎えるまでに5度ブルペンに入っていた田中将は「ブルペンも試合のマウンドも同じような感じでしたが、ゲームの出力というか、エネルギーの使い方があるので、自然とブルペンとは変わりました」と振り返った。

日本野球には7年間のブランクがある田中将。過去に実績があるとはいえ、やはり日本のマウンド、ボール、登板間隔、生活リズムなどの感覚を取り戻すには、それなりに時間が必要だ。だからこそ、先月30日に入団会見を開いたばかりにも関わらず、第2クールの初日の今月6日という早い時期にキャンプに合流した。初の実戦登坂に臨んだこの日にしても、メジャーならキャンプ直後の時期。田中将も「アメリカに渡った7年間は、まだブルペンでしか投げていなかった」と苦笑する。

「早め早めにいろんなことを感じたい、というのがあった」と田中将。順応に苦労することは織り込み済みで、開幕から逆算しキャンプ合流、実戦登坂のスケジュールを練っていたわけだ。石井監督も「(開幕までに)あと4~5回登板できる。日本の野球とのズレを徐々に擦り合わせていける十分な時間がある」とうなずいた。

田中将は復帰会見で「ワールドシリーズに出てチャンピオンリングを手にしていない。そこはメジャーでやり残した部分」としながらも、「腰掛けのつもりではなく、本気で日本一を取りに行きたいと思っての決断」と強調した。全力でもう1度日本野球に順応しようとしている姿がここにある。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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