古里の与那国を「ばちらぬん」 京都芸術大学の東盛さん、制作映画で生まり島に恩返し

 【与那国】与那国町祖納出身で、京都芸術大学映画学科俳優コース4年生の東盛あいかさん(23)が卒業制作で作った映画「ばちらぬん」が5日、同大学の学長賞を受賞した。「ばちらぬん」とは、与那国方言で「忘れない」の意味だ。同作品は与那国町内や与那国島に縁のある子どもから大人まで話題となっている。

 監督、主演、脚本を手掛けた東盛さんの作品は、主人公の少女が現実世界と異世界を行き来しながら、与那国島の現在・過去・未来を伝える「半ドキュメンタリーファンタジー」。昨年3月から10月にかけて、主に与那国島や京都で撮影した。
 帰島するたびに変化していく島の自然や文化、与那国方言を守りたい、という思いが制作のきっかけとなったという。特に与那国方言は、ユネスコの消滅の危機にある言語に分類されている。東盛さんは辞書や、島に住んでいる祖父との会話を通して方言を学び続けている。
 作品作りや受賞までの日々を振り返り「私は高校を中退しているが、そのころ周りにたくさん心配や迷惑を掛けた。そばにいた母には一番苦労をかけたと思う。自暴自棄な私がたまたま映画を見始めて、いつの間にか自分も映画を作りたい、出たいと思うようになった。働きながら高卒認定を取って、今の大学に入学した」と振り返った。
 映画に救われたことから、映画で少しでも恩返しができたらという思いがあるという。将来は俳優を続けながら創作も続けていくとし「私の活躍が今まで関わった人や、島の人々、これから島を飛び立つ子どもたちへのエールになれるように頑張る」と話した。
 小学校の恩師で久部良小教頭の水見拓磨さんは「島への思いがあふれた魅力ある作品。多くの人に見てもらいたい」と受賞を喜んだ。映画は京都芸術大学映画学科卒業展専用サイト「D STUDIO」で、28日まで公開されている。
 (村松友紀通信員)

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