メクル第526号 コスチュームアドバイザー・松尾千種さん 晴れ姿をコーディネート

「刺繡も細やかで豪華な印象ですよ」と声を掛ける松尾さん

 コスチュームアドバイザーは、結婚(けっこん)式で花嫁(はなよめ)が身にまとうドレスや着物、それに合う小物などをコーディネートするスペシャリスト。一人一人の雰囲気(ふんいき)や好みに合った1着を選び、人生最高の晴れの日をお手伝いします。

◆ポイント絞(しぼ)る
 大学卒業後に入社して12年。接客(せっきゃく)からドレスの仕入れ、パンフレットやCMの撮影(さつえい)などの仕事を経験(けいけん)し、現在(げんざい)はスタッフをまとめるチーフコーディネーターを務(つと)めています。
 緻密(ちみつ)なレースやきらめくビーズの装飾(そうしょく)が美しいウエディングドレスの他に、水色やピンクなどさまざまな色のドレスは合わせて約600着。着物は色打ち掛(か)けだけで200着以上そろえています。たくさんのドレスの中からお気に入りの1着を選ぶため、エレガントな雰囲気がいいのか、個性的(こせいてき)なデザインがいいのかといった、お客さまがこだわりたいポイントを絞(しぼ)り込(こ)むことから始めます。

◆美しい所作(しょさ)で
 「オフショルダーのデザインがとてもきれいですね」「ビーズの刺(し)しゅうに照明が当たるとすてきです」。ドレスの見え方や使われている素材(そざい)など、細かな特徴(とくちょう)を丁寧(ていねい)に説明。商品が少しでもきれいに見えるよう、指先はきちんとそろえて扱(あつか)い、下から大切に抱(かか)えるように持つなど、美しい所作(しょさ)を意識(いしき)しています。ドレスは布(ぬの)をたっぷり使ってあるので重みがあり、20~30キロあるものも。試着室へ運んだり、着替(きが)えを手伝ったりするので、華(はな)やかさとは裏腹(うらはら)に、意外と体力を使います。

◆選ぶ楽しみも
 モデルやフォトグラファーなど一流のスタッフを集めたパンフレットやCMの撮影、ショーの現場にも参加しました。衣装(いしょう)の着付けをサポートしたり、ドレスの裾(すそ)が美しく写るように整えたり。ドレスの持ち味が写真で伝わるようなポーズについて相談されることもあり、全員でいいものを作ろうとする雰囲気に刺激(しげき)を受けました。
 また、ドレスの仕入れに携(たずさ)わることができるのも大きなやりがいの一つです。展示(てんじ)会でたくさんのドレスの中から選ぶのはとても楽しく、それがお客さまに気に入ってもらえるとうれしい気持ちになります。

◆最高の1着を
 この仕事を選んだのは、学生時代のアルバイトで飲食業の接客(せっきゃく)が好きだったことや、地元での就職(しゅうしょく)なら多くの人が知っている歴史ある会社で、と思ったからです。一人前になるのに5年かかるといわれ、ドレスの素材や形、着物の畳(たた)み方などの基礎知識(きそちしき)をしっかり教わりました。少しでも仕事に生かせるよう、レストランなどへ行くと接客の仕方を観察したり、会員制交流サイト(SNS)でトレンドの傾向(けいこう)を見て、お客さまが何を求めているのか感じ取るように心掛けています。
 この仕事は、人生に何度とない結婚式に着るコスチューム選びを任(まか)されるので責任(せきにん)重大ですが、以前担当したお客さまのきょうだいのお世話をするご縁(えん)もありました。信頼をしてもらえたんだ、と大きな励(はげ)みになります。一人一人のお客さまと何でも話してもらえる関係づくりを心掛け、「担当してもらえて良かった」という一言が頂(いただ)けるよう、今後も最高の1着を見つけるお手伝いがしたいと思っています。

きらびやかなドレスが並ぶ店内=長崎市松山町=

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