<書評>『沖縄戦75年 戦火の記憶を追う』 非体験世代が向き合う継承

 「戦後」75年という節目の年であった2020年。戦争体験をどう継承していくのか、「戦後」であり続けるために何が出来るのか。沖縄全戦没者追悼式の開催場所を巡る問題、第32軍司令部壕の保存・公開を求める動き、そして新型コロナウイルスの感染拡大防止のため中止や縮小を余儀なくされた各地の慰霊祭や平和学習。沖縄戦の教訓と継承を考える上でも重要な出来事が続いた。本書はそれらの出来事を踏まえて30人余の沖縄戦体験者の証言や発言が掲載されている。
 戦場の実態を伝えようとする人々、慰霊・追悼の在り方、また第32軍司令部壕を巡って体験者の証言とともに保存・公開・活用に向けてのさまざまな意見や記事、沖縄戦の継承を考える座談会や読者の体験記を基にした連載など県民が体験した沖縄戦の実相に迫り、記録していくこと、これからの継承の在り方について書かれている。
 体験者の切実な言葉の数々に、私たち非体験者は体験者の言葉を受け止め、思いに寄り添うことができているのか、私自身不安になり、自問自答しながら本書を読んでいた。読み進めると、同じ非体験者である記者が県内の戦跡を訪れて、書いた記事に行き当たった。当時の光景や状況、そこにいたであろう人々に思いをはせながら、その場で感じ取ったことを今私たちが生きている社会、状況とも重ね合わせながら書いている印象だ。戦跡案内人の方々は非体験者も多く、この場所をどう残していくか、どう伝えていくか、皆が戦跡と地域の戦争体験に向き合っていると感じた。
 本書にはたくさんの体験者と非体験者が登場する。戦場で何があったのか、なぜたくさんの命が奪われたのか、これから繰り返さないためにどうすればいいのか、そういった思いを抱えながら皆が学び伝えようとしているその姿勢に私自身とても勇気をもらった。体験者が少なくなってしまうことは避けられないが、それぞれの立場でできること、自分にもできることはまだまだあると思わせてくれた。
(大田光・一中学徒隊資料展示室解説員)
 2020年8月に刊行された「沖縄戦75年 戦禍を生き延びてきた人々」の続編で、同書以降に琉球新報で掲載された関連企画や全戦没者追悼式の会場変更問題を追った連載、30人余の沖縄戦体験者の証言を収めた。
 
沖縄戦75年 戦火の記憶を追う 琉球新報社編集局 編著
四六判 286頁

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