【奄美大島】豊かなマングローブの森をカヌーで探索「黒潮の森 マングローブパーク」

奄美大島の中南部の住用町に、マングローブ原生林があります。“マングローブ”とは、海水と淡水が混じり合う場所に生息する樹木の総称です。そこに隣接する「黒潮の森 マングローブパーク」では、原生林の中をカヌーで散策しながら、生息する植物や動物についてのガイドを聞くことができるツアーを実施しています。森の緑に包まれて川に浮かんでいると、自然と一体になるような感覚を味わえますよ。

日本で有数の大きさを誇るマングローブ原生林

奄美大島の中南部にある住用町には、島最大のマングローブ原生林約71haが広がっています。沖縄県西表島に次いで日本で有数の大きさを誇り、その規模は東京ドームの約15個分だそうです。国定公園の特別保護区に指定されています。

「黒潮の森 マングローブパーク」へは、奄美空港から車で70分、奄美市名瀬から車で20分ほどで到着します。筆者は“しまバス”に乗り、「マングローブパーク前」で下車しました。降りるとすぐ目の前です。

まずはマングローブ館でチケットを購入します。カヌー体験は、1回1時間で2,000円(税込)。10時~16時まで1時間半ごとに実施されています。

時間が余ってしまっても、お土産コーナーやレストランがあるので、そこで過ごしても良いですし、外のふれあい広場で森を眺めながら休憩できますよ。

マングローブ館からカヌー発着所までは歩いて5分ほど。発着所でチケットを渡されます。

安定したカヌーなので、子どもから年配者まで無理なく楽しめるのがいいですね。筆者が体験したときも、家族3世代で楽しんでいる方が何組かおられました。

貴重品、スマホなど水に濡れてはいけないものは、発着所にある無料ロッカーに預けます。また、炎天下なので帽子はある方が良いでしょう。カヌーを漕いで汗をかくので、季節によってはタオル、サングラス、日焼け止めの持参をおすすめします。ライフジャケットを着用し、いざカヌー乗り場へ!

カヌーでマングローブ原生林探索へ!

乗船前にはカヌーの漕ぎ方を練習します。カヌーは一人乗りと二人乗りがあるので、好みで選んで下さいね。

筆者はカヌーに乗るのが初めてだったのですが、思ったより簡単です。参加者のみなさん、年齢を問わずすぐに慣れてすいすい漕いでおられました。うまく漕げないと時々水がかかったりしますが、そう大したことはありませんでした。

向かいの山を眺めながら、マングローブ林の中を進みます。マングローブが育つのは、海水と淡水が混じり合う汽水域です。島には年間3,000mm以上という多量の雨が降り、その雨が谷筋を通ってこのデルタ地帯に集まります。

亜熱帯らしい、うねうねとしたマングローブが見えてきました。マングローブを作っている植物は約30種類。大部分はメヒルギとオヒルギです。こちらはメヒルギです。根から塩分を吸収し葉に集め、それを水面に落とす生態が特徴です。奄美大島では、最高気温25度以上の夏日が年間100日を超えるのもマングローブの生育に適しています。

みなさん懸命に漕いでいます。合間にガイドさんがマングローブについて解説してくれます。

オヒルギは、マングローブの中では比較的大きく、通常は高さ7~8m、東南アジアには30mほどのものもあるそうです。住用川の河口に多く生えています。赤い花のようなガクの中に黄白色の花が咲きます。葉は厚く表面には光沢があり、長い楕円形で先端はとがっています。アジア・アフリカなどの熱帯に広く分布し、奄美大島が北限だそうです。一般的には海寄りに生えます。

筆者が撮影に熱中し、ほかの参加者に遅れを取っていたら、ガイドさんが綱をかけて先導して下さいました。うまく漕げずに遅れても、ガイドさんがしっかりフォローしてくれるので安心です。

こちらはメヒルギです。マングローブではわりと小さく、通常は約2~3m、高くても7~8mほど。河口に多く生えています。樹齢が60年を超えるものもあるそうです。陸寄りに生えます。葉は小型でやや薄め、表面には光沢があり長楕円形で先端は丸くなっています。

春になると果実の中で種が芽を出し、果実の外にまで伸びてきた鉛筆状のものが木にぶら下がります。この苗のようなものが落ち、どこかに流れ着くと根を出して新しい木に育ちます。

メヒルギとオヒルギはオスとメスだと思われがちですが、全く別の種類です。ヒルギの根には中央にコルク層が発達し、海水の塩分をろ過して水を取り入れることができるのだそうです。そんな仕組みを持つ植物が存在するとは驚きです。

最大の名所は緑に包まれるトンネル

ハイライトの緑のアーチが美しいトンネルまでやってきました。

潮の満ち引きの影響を受けるので、カヌーでマングローブの水路に入れるのは満潮時のみです。干潮時にはカヌーで入れる場所は限られますが、さまざまな形のマングローブの根やカニなどの生き物を見ることができます。潮の満ち引きで表情が変わるのも興味深いですね。

満潮時にしか通れない水路の奥です。光が射し込み、木漏れ日が美しい!ここでガイドさんが各自が持つスマホで記念撮影をしてくれます。いい想い出になります。

では、そろそろ折り返しです。また同じ道を漕いで行きます。オール使いにもだいぶ慣れてきました。

豊かな生態系を守る「生命のゆりかご」

マングローブの落ち葉や枯れ枝はバクテリアによって分解され、栄養分の高い有機物になります。それを求めてプランクトンが集まり、これらをエサにするカニや小魚がやってきます。次はこれらを狙ってチドリやサギなどが集まってきます。

またその周辺に咲く花の蜜を吸いにメジロやヒヨドリなどの小鳥や昆虫が寄り、それらを狙ってハヤブサなどの猛禽類も現れます。魚では林内や干潟で活動するミナミトビハゼ、海から入ってくるヒラアジ類、フエダイ類、ボラなどの幼魚がいます。これらの魚は水鳥の格好のエサです。

このようにマングローブを中心とした生態系が干潮、満潮のリズムと共に繰り広げられているのです。今回は昆虫や魚、花を見ることはできませんでしたが、実際にこの場で話を聞いていると、命が循環しているのを体感できます。

マングローブは熱帯林の一部であり、生き物を育て環境を作り出す役割と共に、森と海、両方の環境を守る働きがあります。マングローブにすむ浄化生物によってきれいな水が海へ運ばれ、海の魚たちに豊富なエサや幼魚の生育環境を与えるなど、豊かな生態系を守る「生命のゆりかご」であり、地球環境にとって重要な役割を果たしています。

このカヌー体験でさまざまなことを学び、楽しみながらも勉強になり有意義な1時間でした。

マングローブ館には、マングローブについてわかりやすく解説しているコーナーがあります。カヌー体験を終えた後は、ぜひこちらに立ち寄ることをおすすめします。今見てきた植物や生物について、より詳しく知ることができますよ。

こちらは館内のレストランでいただいた、奄美名物の鶏飯(ケイハン)です。奄美に来たら一度は味わいたいですね。

カヌーを漕ぎながらマングローブに囲まれた大自然の中で過ごし、すっかりリフレッシュできました!

■カヌーツアー時間(各回1時間)

10:00/11:30/13:00/14:30/16:00

■カヌー料金

一般(20名未満)

2,000円(税込)/小中学生1,800円(税込)/幼児無料

入園料込み、ガイド・損害保険付き

黒潮の森 マングローブパーク

住所:鹿児島県奄美市住用町石原478

電話:0997-56-3355

アクセス:奄美空港から車で70分

奄美氏名瀬から車で20分

路線バス:古仁屋行き「マングローブパーク前」下車

西仲間行き「西仲間」下車 徒歩7分

URL:https://www.mangrovepark.com

[Photos by Yo Rosinberg]

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