「収束への一歩に」期待 市民、不安や慎重な声も 長崎県内 ワクチン接種開始

注射器にワクチンを移す看護師=大村市、長崎医療センター

 長崎県内で新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まった22日、医療関係者からは「感染収束への大きな一歩になってほしい」と期待する声が上がった。今後順番が回ってくる市民からは、接種による感染防止や経済回復への効果を望む一方、副反応への不安や情報不足などから「接種の必要性を見極めたい」と慎重な声も聞こえた。

 大村市久原2丁目の長崎医療センターではこの日、医師や看護師、事務職員ら60人が接種した。問診後、腕に筋肉注射を受け、別室に設けられた広めの待機場所に移動。約15分かけて体調に変化がないことを確認し職場に戻っていった。
 会場には市や市医師会の関係者の姿も。江崎宏典院長は「手順やバックアップする看護師の配置など集団接種の際の参考にしてもらいたい。ワクチン接種により、新型コロナに対する医療体制を守ることにつながる」と述べた。
 「自分が感染して高齢の利用者にうつすわけにはいかない」。長崎市の通所リハビリ施設で働く50代の女性看護師は、多い日は一日に約40人の介護を担当する。今月上旬、施設内で接種の希望調査があり「迷わず丸をつけた」。副反応への不安は残るが「早く打って利用者も自分も守りたい」と使命感を口にする。

医療従事者を対象に始まった新型コロナウイルス感染症のワクチン接種=諫早市永昌東町、諫早総合病院

 対馬市上対馬町泉の民宿経営、板井達夫さん(69)は島内にコロナ専用病床が4床しかないことに触れ、島内でまん延すれば「手の施しようがなくなる」と危機感を募らせる。ワクチンを接種せず重症化するリスクと副反応が起きるリスクをてんびんにかけ、命を守る上で優先すべきは「接種」だと言い切った。
 感染の「第3波」を受け、1月中旬から県が独自に長崎市に発令した緊急事態宣言。今月7日の解除後も「客は全く戻らない。昼も夜も人がいない」。同市内の居酒屋オーナー、毛利元和さん(66)は閑古鳥が鳴く現状を嘆き、ワクチン接種に望みを託す。「街全体の活気回復に少しでも効果をもたらしてほしい」
 接種を迷っている市民も少なくない。佐世保市の主婦(68)は国民の努力義務ならばと接種を検討するが「本当に効果があるのか。副反応も心配」と懐疑的な見方を示す。
 普段から風邪をひきにくい体づくりに取り組んでいるという同市の30代主婦は「(接種は)すぐには考えていない」。一方で「ワクチンに感染防止の効果があるなら(自ら接種することが)医療従事者を助けることにつながる」との考えも。「今は様子見」と周囲をうかがう。
 妊婦は有効性や安全性に関する情報が十分に集まっていないため、接種の「努力義務」の対象外になっている。第3子を妊娠中の大村市の女性(39)は「情報が交錯して何が正しいのか分からない」と不安げ。もし自身が感染すると子どもたちの世話はどうすればいいのか-。「家族のためにも接種の必要性をしっかりと見極めたい」と話す。


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