「企業の森づくり」脚光 15年で計38社

企業の森づくり事業で苗を植える関係者ら=延岡市(県緑化推進機構提供)

 山の再造林率が県の目標(80%)に届かない中、スギなどの伐採跡地を広葉樹を中心に再生する「企業の森づくり」事業に光が当たっている。県がスタートさせて3月で15年を迎え、山主に代わり企業が整備する森林保全活動に計38社が参入。現在は17市町村の計41カ所325ヘクタールで整備が進む。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」達成への貢献にもつながるとして、さらに裾野を広げたい考えだ。
 県などによると、ここ3年は新規契約が年間4~6社。2021年度以降の締結に向けてすでに数社から相談が寄せられている。
 県から事業を委託された県緑化推進機構(宮崎市)は、市町村有林のほか、自ら行う再造林に二の足を踏む山主らと企業をつなぐ仲介業務を担う。同機構の中武浩一事務局次長は「再造林費用の工面が難しい山主に企業が協力し、荒らすことなく再生できる」と利点を説く。
 参入する企業は、県と山主、現場作業に当たる森林組合などと4者協定を締結。最大15年の契約期間中に苗を植え、下刈り、除伐を通して整備する。費用は国や県の補助(補助率68%)を活用できる。
 企業は主にヤマザクラやクリ、クヌギなどの広葉樹を植栽。企業そのもののイメージアップや環境教育を取り入れた社員研修、自然と触れ合うレクリエーションの場にもなっている。
 延岡市と西臼杵3町で40ヘクタール以上の大規模な森林を整備するのが旭化成延岡支社。五ケ瀬川水系から工業用、発電用水を確保していることから、上流の森林機能維持に向けて07年から広葉樹の森づくりに着手、拡大してきた。同支社は「コロナ禍で昨年中止した植樹祭を再開し、さらに規模を広げていく」と意気込む。
 宮崎日日新聞社も11年から、宮崎市の椿山森林公園に隣接する私有林(1ヘクタール)にヤマザクラなど広葉樹約3千本を植え、「新聞の森」として整備している。
 同事業では目標15「陸の豊かさも守ろう」などのSDGsとも絡め、20年3月にまとめた企業の活動事例集で意義を紹介。県環境森林課は「SDGsを一つの切り口としてPRしていきたい」と話している。
再造林率 県によると、直近の2019年度は75%(針葉樹)にとどまった。同年度までの5年間に再造林されなかった山は、ひなたサンマリンスタジアム宮崎(宮崎市)千個分以上に相当する3189ヘクタール。

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