日米の違いで故障の危険性も順応 トレーナーも驚く田中将大の「PDCA」力とは?

田中将大のトレーニングを主導する星洋介氏(左)【写真:宮脇広久】

同期入団の星トレーナー「成功体験を積み重ねても全く変わらない」

楽天に8年ぶりに復帰した田中将大投手。メジャーとは違うボール、マウンド、中4日から中6日に変わる先発ローテーションなどに、もう1度対応し直さなければならない。技術はもちろん、体の順応も求められている。その部分を担っているのが、球団コンディショニング部コンディショニンググループマネジャーの星洋介氏である。【宮脇広久】

星氏は主に投手陣の体の状態を常にチェックし、トレーニングメニューを考案して主導。ストレッチなどでケアまで行い、選手たちからの信頼が厚い名トレーナーだ。田中将とは気の置けない仲のようで、ウォーミングアップ中には、ふざけてプロレス技のスリーパーホールドを掛けられたり、軽い膝蹴りを食らったりしている。

マー君より9歳上の41歳だが、2007年楽天入団の“同期”。「最初は僕の方がちょっと威厳があったのですが、2011年に田中が19勝を挙げて初めて沢村賞を獲得したあたりから、向こうのグレードが上がって、イジられ具合が増しました」と苦笑する。田中将はヤンキース時代も、シーズンオフには楽天の球団施設を借りて自主トレを行っていたため顔を合わせる機会が多く、シーズン中もメールやLINEのやり取りをしていたとあって「“久しぶり感”はないですね」と言う。

「実際、全く変わっていないところが、逆に凄い。ニューヨークという厳しい環境で成功体験を積み重ねてきたけれど、調子に乗っているところも、もちろん見下すようなところもない。みんなとコミュニケーションを取って話しやすい雰囲気を作っているのは、さすがだなと思います」と目を細める。

Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクル

今月6日にチームに合流した田中将は、3月26日の公式戦開幕へ向けて順当に調整しているように見えるが、8年ぶりの日本の環境に順応するのは、決して簡単な作業ではない。星氏は自身の職域として「例えば、メジャーの固いマウンドで投げていたメカニックと、日本のやや軟らかいマウンドで投げるメカニックとは違う。そこで障害や故障が起きないように、今どういう動きがしにくくなっているのか、どの筋肉が固くなっているのか、どこに力が入りづらくなっているのか、などを細心の注意を払ってチェックしています」と語る。

田中将は環境の変化への対応や故障予防の面でも一流だと言う。「コツをつかんでしまえば早いです。追求心が旺盛で、問題点を発見するのが早く、それに対するアプローチにも妥協がない。いわゆる“PDCA”が速い」と評する。PDCAとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返すことで、継続的に業務を改善することを指す。田中将はそこに淀みがないと言う。

旧知の田中将を体力強化とケアの面で支えている星氏。まるで東日本大震災からちょうど10年の節目を待っていたかのようなマー君の復活劇は、本人のみならず、こうした縁の下の協力者がいてこそ実現する。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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