コロナ鎖国で苦境の北朝鮮タバコ農場、作物を転換

中国との国境に面した北朝鮮・咸鏡北道(ハムギョンブクト)穏城(オンソン)郡の倉坪(チャンピョン)労働者区にある4.25タバコ農場。

4.25とは、金日成氏が1932年、現在の中国吉林省朝鮮族自治州の安図県で、抗日遊撃隊を創設した1932年4月25日を指す。このことから、この農場は朝鮮人民軍(北朝鮮軍)系であることがうかがえる。

この地には1987年まで12号倉坪管理所(政治犯収容所)があったが、1990年代に中国に輸出するためのタバコを栽培する農場となった。ところが、新型コロナウイルス対策で国境が封鎖、貿易が停止されたことから輸出ができなくなり、苦境に陥っている。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、この農場で栽培されたタバコは国境封鎖で輸出できず、野済みにされていた。そして雪で濡れてしまい、半分以上が腐ってしまった。残りも質の良い一等品ではなく、貿易が再開されたとしても売れる保障はない。

昨年は実績が上がらず、来年はいっそう状況が深刻になると見た農場の幹部は、咸鏡北道の農村経営委員会など上部単位と共に、解決策を探るための討論を繰り返していた。

そこで出た結論は、農場の土地を農民に貸し出して他の作物を栽培させるというものだ。

農場の3割を占める肥沃な土地ではタバコ栽培を行い、残りの7割を農場員に任せ、他の作物を栽培させる。数年前に同様の措置を行ったときと同様に、大人も子どもも関係なく農場に住む者1人あたり200坪の土地を割り当てて、収穫物の一部を収めさせる。

農民のモチベーションを上げるためインセンティブ制度である「圃田担当制」だ。ただ、収穫の何割を収めるかは、秋の収穫の状況を見て決めるとのことだ。

これが成功するかは未知数だ。討論を繰り返しているうちに、土地を分け与える作業が遅れ、今月に入ってからようやく行われたことで、農作業の開始が遅れてしまった。ちなみにタバコ栽培の場合、2月から準備を始め、3月上旬にビニールハウスの苗床に種を植える。5月上旬に畑に植え替え、7月末から収穫を行い、10月まで乾燥作業を続ける。

また、営農資材の輸入ができず、収穫のほとんどを国家に持ち去られる事態が多発するなど、圃田担当制は成功したとは言いにくいのが実情だ。

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