横浜市、2万8千戸の空き家管理促進へ 条例成立、危険回避措置盛り込む

横浜市役所

 横浜市内に約2万8千戸ある空き家の所有者責務を明確にするとともに、市が必要な措置を適切に講じることを可能にする条例が、市会第1回定例会本会議で可決、成立した。放置すれば倒壊などの可能性がある「特定空き家」での外壁剝離といった危険に対し、市は代執行の手続きを踏まずに外壁を撤去するなどの措置が取れるようになる。施行は8月1日で、空き家に関する危険回避措置を設けた条例は県内で2例目。

 市によると、市内には一戸建ての空き家が約2万8千戸あり、中でも破損したり管理されていないなどの物件は約6400戸あり、特に程度が著しい「特定空き家」は市が現在把握できているだけで226戸に上っている。市は引き続き調査を進めていくとしており、今後「特定空き家」は増える恐れがあるという。

 条例では、「空家等対策の推進に関する特別措置法」で努力規定となっている空き家の適切な管理について、所有者の責務を義務化。所有者が勧告を受けても改善しない場合などは、必要に応じて危険性を周知する標識を同特措法の規定よりも早い段階で設置することを可能としている。

 危険回避措置は、特定空き家のトタンの外壁1枚が今にも剝がれ落ち、通行人にけがをさせる恐れのある事態などを想定。危険を避けるため剝がれそうな外壁を撤去するなど、必要最小限の措置を行うことができ、費用は所有者がいる場合は原則、所有者の負担とする。

 また、所有者が分からなかったり存在しない空き家に対しては、地元住民に所有者に関する情報提供を求めることができるとした。

 市は今回の条例導入により空き家の適切な管理の促進を目指すとともに、市の補助制度を活用してもらうことで、空き家の除却なども進めていく考え。市建築局の担当者は「必要な措置と必要な支援を適切に講じていくことで、空き家問題の解消を目指したい」と話している。

 倒壊の恐れや衛生、景観面で著しく問題がある空き家の適正管理は全国的に課題となっている。市によると、全国の20政令指定都市のうち空き家の適切な管理に関する条例を制定しているのは11市で、危険回避措置が明記されているのはそのうち9市。県内では6自治体が制定しており、危険回避措置は横須賀市で導入されている。

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