読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、32歳、会社員の女性。家計を見直し、貯蓄や投資をしていこうとしている相談者。ところが現状の収支では、毎月の貯蓄ができておらず、借入もありました。収支を黒字化して資産形成するには? FPの秋山芳生氏がお答えします。
月々の収入を最近やっと見直し始め、貯金をしていこうと考えています。投資にも興味があり、少額から始められる投資があればと思っていますが何から始めればいいのかよく分かりません。
【相談者プロフィール】
・女性、32歳、会社員、独身
・同居家族について:なし
・住居の形態:賃貸
・毎月の世帯の手取り金額:18万円
・ボーナスの有無:なし
・毎月の世帯支出の目安:15万9,500円
【毎月の支出の内訳】
・住居費:7万円
・食費:2万円
・水道光熱費:1万円
・保険料:6,500円
・通信費:2万3,000円
・その他:食費と日用品3万円
・お小遣い:0円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:出来ていない
・現在の貯蓄総額:0円
・現在の投資総額:0円
・現在の負債総額:12万円
秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼FP YouTuberの秋山芳生です。月々の支出の見直しを始められ、また、投資にも興味があるとのこと。ぜひ応援していきたいと思います! 自分のお金と向き合い、未来をデザインしていくことのお手伝いをするのがファイナンシャルプランナーの役割だと思っています。
収支の改善をしていくには、収入と支出をしっかりと見ながら、バランスのとれた家計をつくっていくことになります。収入を把握することは難しくありませんが、支出を把握し、問題点をしっかりとみつけることは意外と難しいもの。また、闇雲に節約をしても、努力のわりに成果があがらないことが多くあります。どの支出が使いすぎなのかを正確にとらえるとともに、的確な解決策を実行することが重要になります。
家計の改善は家計の把握から
それでは、まず収入と支出のそれぞれを把握していきたいと思います。
ご収入は月の手取りが18万円で、支出は毎月15万9,500円が目安としてあるとのことですが、毎月貯蓄ができていないとのこと。ここで計算が合わなくなります。また、負債が12万円あるのですね。
ここから考えられる問題は、「家計が正確に把握できていない」ということです。「その他」の費目に「食費と日用品3万円」とありますが、それ以外の支出もあるように思います。借入が起こった原因と、月々の支出を把握して、どこに費用がかかりすぎているのかは、家計簿アプリを活用して管理されると良いと思います。しっかりと設定すれば自動で家計が管理できますし、少しのメンテナンスで支出を正確に把握することができるようになります。
もし、家計簿アプリなどを既に活用していても、内訳がしっかりと把握できていないようであれば、月に一回は、アプリ上のデータを紙やエクセルに書き出していくことをおすすめします。自動で家計簿が記帳できていても、それが正しく仕分けされておらず、「なんとなく家計簿ができている」という状態は、実は家計簿の実力の半分も出せていない状況です。費目の仕分けをしっかりとすることと、月に一回は家計を振り返ることで、どの費目にいくら使っているのかが把握出来るようになります。
その保険料、本当に必要?
その上で、まずは固定費について考えていきたいと思います。節約は食費などの変動費からやりがちですが、節約の努力が必要な上、無理すると長続きせずリバウンドしがちです。固定費は、見直す手続きが面倒臭かったりしますが、一度見直しができると長く節約効果が持続するのでおすすめです。
固定費は、家賃、保険料、通信費などですが、ご相談者さまの支出でまず気になるのが保険料です。
現在支払っている、6,500円の保険料は、現在お独り身でいらっしゃるので絶対に必要というものではないと思います。どのような内訳なのか不明ですが、医療保険については、高額療養費制度もありますので、万が一入院するようなことになってもそれほど大きな負担にはなりません。そして、死亡保険も、現状、ご相談者様の収入で誰かの生活を養っていく必要はないと思いますので、解約しても問題ないでしょう。
保険料を支払うよりも、まずは医療費に対応できるだけの預貯金をつくられることを優先されると良いと思います。6,500円×12カ月で7万8,000円が年間で貯まります。5年で39万円、10年で78万円、20年貯めれば156万円です。
次に見直したいのは通信費
通信費についても非常に高い印象です。2万3,000円とのことですが、通信・通話費、端末代、ネット回線利用料などでしょうか? 仮に6,000円のネット回線、1万円のスマートフォン端末代、7,000円のスマートフォン通信費として考えてみます。
スマートフォンの通信費は、格安携帯に変えることで、3,000円以下に減らせると思います。端末の支払いがありキャリアの変更が出来ないと考えているようであれば、端末代と利用料を分けて考えて整理したほうがよいでしょう。ネット回線は4,000円代のところもありますし、ポケットWi-fiや、スマートフォンのテザリングを活用することで月々の支払いを下げることができると思います。
黒字部分の活用方法は?
6,500円の保険をなくし、通信費を3,000〜7,000円くらいまでに抑えることができれば、毎月2万円ほど収支が改善します。
この収支の黒字部分の活用方法についてですが、すぐに資産運用に入らず、まずは貯蓄をしっかりとしていただければと思います。万が一働けなくなってしまったり、収入が途絶えたりした場合に生活を守るためのお金を、「生活防衛費」と言います。この生活防衛費の目安は、会社員であれば生活費の6カ月ほどです。
支出改善をしても、14万円ほどは生活費がかかると思いますので、まずは手元に84万円ほどの現金貯蓄を作ることを目標にしましょう。半年分ほどの生活費があれば、収入が途絶えてもすぐに借入のサイクルに入らなくて済みます。
生活防衛費を貯めたあとは、ライフイベントのお金を貯めよう
生活防衛費が貯まったあとは、その他に考えられるライフイベント分も貯めていきます。例えば、1年以内に引越しを考えていれば、敷金・礼金・仲介手数料・前払い家賃・引越し業者代・火災保険などの費用です。このように、直近で使うのがわかっている費用を現金で確保するのではなく、投資に回してしまっていると、いざ必要になったとき時、市況によって引き出せなかったり、大きく損をしてしまう可能性があるので注意が必要です。
初めての投資は何から?
投資は10年以上先の生活を見越して行うものです。短期での投資は、価格の変動幅が大きくなりがちで、リスク(金額の振れ幅)が大きくなってしまい損失が出る可能性があるからです。多くの方にとっては老後にむけた資産形成になると思います。ご相談者様も、おそらく老後が不安で貯蓄型の保険を始めたのだと思います。
投資で利益が出た場合には、利益に対して20.315%の税金が発生しますが、NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)などの税制優遇制度を活用することで免除されます。
iDeCoは掛け金の全額が所得控除を受けられ二重にお得になりますので、老後の資産形成手段としては第一候補になると思います。一方で、まだご相談者様はこれからも想定外に現金が必要なライフイベントがおこるかもしれません。iDeCoなどの確定拠出年金は60歳まで引き出せないという制約があり、使い勝手が悪い部分もあります。まずは投資に慣れるという意味で、少額の「つみたてNISA」などから投資を体験して資産形成を学んでいってはいかがでしょうか?
支出を把握し、支出を抑え、適切に貯蓄と資産形成をしていけば、不安もなくなり、文字どおり人生が変わっていきます。また、知っていることと、実施していることには大きな隔たりがあります。知っていてもやらなければ改善しないのは明白です。ぜひ足元の家計を把握すること、固定費の見直しから実施していただければと思います。
以上、ご参考になれば幸いです。