「衰え感じていない」37歳迎えるヤクルト坂口 ライバル加入も「勝負できる」

ヤクルト・坂口智隆【写真:荒川祐史】

37歳を迎えるシーズン「想像していた30代後半より『体は動くんや』って」

今年の7月7日で37歳を迎えるヤクルトの坂口智隆外野手。大ケガを乗り越えコツコツと安打を積み重ね昨季は通算1500安打も記録した。実績十分のベテランだがプロ19年目を迎える今シーズンは「自分自身の野球人生で大きなポイントになる年」と捉えている。飽くなき向上心で突き進むヒットマンが勝負の1年に向かう心境を大いに語った。【取材・構成/橋本健吾】

「体も順調ですし、想像していた30代後半より『体は動くんや』って思いますね。どこか衰えたとも感じてないし良い形でスタートは切れたんじゃないかな」

これまで度重なる逆境を乗り越え現在の地位を築き上げた。オリックス時代の2012年に右肩脱臼、靭帯断裂の大ケガ負うと、その後は本来の打撃を取り戻せず2015年オフに自由契約を自ら申し出てヤクルトに移籍。2016、17年と2年連続で155安打をマークし完全復活。だが、2018年には青木宣親の復帰により中学生以来となる一塁手にもチャレンジ。2019年はシーズン序盤に左手親指骨折で離脱すると打撃の感覚が戻らず、わずか22試合の出場に留まった。昨季は114試合に出場し通算1500安打を記録したが納得できる打撃内容ではなかった。

「他の選手はどうか分からないけど、自分の中では怪我をしたら元の状態には絶対に戻れないと思っている。2012年の時にはそこを追い求めて時間がかかった。あの時の経験が今に生きているとは思っています。新しい形にチャレンジする。去年の成績はダメだったけどその中で何か一つでも数字が上がっていることはプラスに捉えたい。イメージしているものは徐々に出来上がってきている」

昨季はキャリハアイの9本塁打「まぐれ」も「その形で打てたことはプラス」

昨季は打率.246と苦しんだがキャリアハイとなる9本塁打をマーク。「まぐれ」と苦笑いを浮かべるが「自分はホームラン打者じゃないし、打ち損じでスタンドまで届くようなことは絶対ない。9本塁打に満足はしてないが、その形で打てたことはプラスに捉えています」と、復活に向けた手応えを感じている。

今シーズンは一塁に通算2171安打を誇る内川聖一内野手、外野にはメジャー通算77本塁打のドミンゴ・サンタナ外野手が加入。熾烈なポジション争いを強いられることになるが「試合に出たいという思いがブレなければいい。チャンスが全くないわけじゃない。自分の出来ること、チームが勝つために突き詰めていけば勝負できる」と自信を見せる。

これまでも怪我を乗り越え、ライバルの加入にも打ち勝ってきた経験があるからこそ坂口の言葉には重みがある。完成間近に思えた自身の打撃スタイルを何度も崩し、新たな形を作ってきた。今季は3年契約最終年を迎える。この世界は結果が全て。同じ力なら将来性のある若手が起用されることも理解している。

「この先、続けるか続けれへんか…。今年が凄く大事な年になると思う。自分自身の野球人生にも大きなポイントになる年になる。例えば怪我をしたらいつまでも、1回目の時(2012年)みたいに長くは待ってくれない。年齢的にも。『まだ、やれるぞ』と見せるのには大事な年になる」

通算1500安打を達成し次なる目標も問われると間髪いれずこう答えた。

「周りは2000安打っていうけど、そこまでの数字は想像できない。今はもっと打ちたいし試合に出たい。本当にそれだけ。目標は一つだけ、レギュラー獲得です」(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

© 株式会社Creative2