「東インド会社」研究深化 オランダ商館ヘリテージネットワーク アジア史料保護強化 蘭で文化財保護プログラム

2011年に復元された平戸オランダ商館。新型コロナウイルス禍の前には毎年3万人程度が見学に訪れていた=平戸市大久保町

 長崎県平戸市の平戸オランダ商館を中心に、オランダ東インド会社(VOC)ゆかりの7カ国・地域の商館、13施設でつくる「オランダ商館ヘリテージネットワーク」の関係者が今秋、オランダ国を訪問する計画が進んでいる。文化財の保護、活用の世界をリードする同国の知見を共有する教育プログラムを実施。16、17世紀にアジア交易で成果を上げ、世界の海に覇を唱えたVOC研究の深化を目指す。
 VOCは日本では1609年、平戸に貿易拠点を置き、商館や倉庫などを整備した。平戸市は2011年、商館の「石造倉庫」(1639年築造)を平戸港口を望む同市大久保町に復元。現在、「平戸オランダ商館」の名称で、両国の交流を物語る史料の展示、研究拠点として、公益財団法人の松浦史料博物館が運営している。
 ヘリテージネットワークは、平戸の商館が東アジア各国・地域との連携を進めようと構築を提案。平戸が事務局となり、2015年、インドネシアのジャカルタで設立総会を開催。19年まで毎年、各地で研究成果を報告する総会を開くなどしてきた。
 一方、オランダ国側も、ネットワーク加盟施設の文化財保全への関与強化を打ち出し、昨年、各施設の担当者らを自国に招く計画を提案。新型コロナウイルスの感染状況が改善すれば、今秋にも13施設の関係者が同国を訪れる予定。

インドネシアのジャカルタで開かれたオランダ商館ヘリテージネットワークの瀬立総会=2015年5月(松浦史料博物館提供)

 平戸の商館ではこれまでも、オランダ国には同国内の文献閲覧などで支援を受けてきた。会計帳簿類などの研究から、1630~40年ごろのVOCの貿易取扱額では平戸が最大だったことが判明。主に絹製品、生糸が輸入、金、銀などが輸出されていたことが明らかとなっている。
 平戸オランダ商館の岡山芳治館長は「オランダからの人的、財政的な支援はネットワークの運営、研究の継続のため、大変ありがたい」と今回の計画を歓迎。同市文化交流課の今村達也課長は「商館の研究は、歴史のまち平戸の価値を高めている。市民にこれまでの成果を発信し、市教委と連携して児童、生徒にも伝える取り組みを検討したい」と話す。


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