長崎・中村知事 県政の展望<1> コロナ難局、施策に影落とす

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中村知事は19日の臨時記者会見で、年明けに発令した特別警戒警報の解除を発表した。新型コロナ関連の知事会見はこの1年で計28回を数える=県庁

 1月16日夕、長崎県庁。知事の中村法道は3階の記者会見場に姿を見せると、謝罪の言葉から始めた。
 「昨日、新型コロナウイルス対策で記者会見の機会をいただいていたが、協議・調整に時間を要し、キャンセルしたことをおわび申し上げる」
 前日の15日、中村は長崎市長の田上富久、佐世保市長の朝長則男とそれぞれリモート会議に臨んでいた。
 県は感染者が急拡大していた長崎市に独自の緊急事態宣言を発令する方針を固めていたが、焦点は飲食店への営業時間短縮要請と協力金支給をどの地域まで広げるかだった。宣言を出す長崎市内だけを対象とすれば理屈は通りやすいが、佐世保市内の飲食店などでもクラスター(感染者集団)が発生し、専用病床は逼迫(ひっぱく)。ほかの地域でも感染が広がっていた。
 中村は両市長との会談後、県内21市町の首長らと急きょリモート会議を開催。複数の自治体から時短要請と協力金支給の要望があった。中村は県財政の厳しさを訴え、協力金の8割に国の交付金を充て、残りの2割を県と市町が折半することを提案。県内全域の時短要請に大筋了承が得られたが、一部自治体が判断を保留し、翌16日午前中に結論は持ち越された。
 新型コロナの大流行という未曽有の事態にどう向き合うか。政府は基本的対処方針や膨大な量の通知を自治体に提示するが、都道府県ごとに状況は異なり知事の判断に委ねられる部分が大きい。先月15日の中村知事と市町長の協議は図らずもその難しさを浮き彫りにした。そして県の施策にも影を落とす。
 県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業。県は昨年12月から水没予定地に暮らす反対住民との対話に向けてギアを一段上げた。「事業の白紙撤回が対話の条件ではない」との住民側の意向を受け、担当者が座り込み現場を訪れ真意を探った。だがその後、年明けにかけて県内をコロナの“第3波”が襲い、県は警戒レベルを引き上げ県民に不要不急の移動自粛を要請。現場訪問も一時控えざるを得なかった。
 そうする間にも来年3月1日に3期目の任期満了を迎える中村の時間は刻一刻と削られていく。住民が土地の明け渡しに応じない場合、家屋などを強制撤去する行政代執行について中村は「任期中に方向性を出したい」とし、その大きな政治決断をいつ下すのか関係者は注目する。4選出馬は周辺の多くが「ない」と予想するが、石木ダム解決の道筋が見えなければ「4期目もあり得る」との見方も浮上している。(文中敬称略)

 中村知事の3期目は間もなく残り1年となるが、新型コロナウイルス対策にかつてない労力を割きつつ、従来の施策も進めるという難局に直面している。県政の重要施策を展望した。