地元編集者らが教える「道東」の魅力 受賞の非公式ガイド本、口コミで広がる

 「道東」と呼ばれる北海道の東側で活動するフリーランスの編集者、写真家、デザイナーら男女5人でつくるグループ「ドット道東」が、同名の非公式ガイド本を発行した。一般のガイド本には掲載されない地元の穴場やキーパーソンを紹介。漁師や酪農家、映像制作者らが道東で生きる誇りや夢を語っている。昨年11月、内閣府などが後援する「日本地域情報コンテンツ大賞2020」の地方創生部門で最優秀賞を受賞。ネット上の口コミで読者が広がっている。(共同通信=青柳絵梨子)

「ドット道東」代表の中西さん(中央)

 釧路、根室、十勝、オホーツクの4地域に分かれ、中国地方と同じくらいの面積に約92万人が暮らす道東。霧深く冷涼な気候と世界自然遺産・知床に代表される大自然が魅力のエリアだが、自治体は人口減と過疎化に頭を悩ませる。経済の中心、釧路市でも、かつてにぎわった百貨店は閉店し、駅前の商店街はシャッター通りになりつつある。

 ドット道東の代表で北見市の編集者中西拓郎さん(32)は活気を取り戻すためのキーワードとして「越境」を挙げる。「これまで自治体の中で完結していたコミュニティーや商圏を、境界線を越えて広げていく必要があります。道東は広大で人々が点在し、つながりが生まれづらかったけれど、ドット道東が仲介役となってつなぎます」

 一人一人が道東エリアで生きていることを意識し、その魅力をブランドとして捉え高め合えば、相乗効果で挑戦しやすい土壌が生まれると、中西さんは考える。その第一歩として、各地で自分らしく生きる人々の物語を紹介したガイドブックを制作した。

 費用はクラウドファンディングで集め、398人が計334万円を寄付した。2019年12月から昨年4月まで取材し、道内外の約50人が紙面デザインや校正などを担った。

花咲線で旅をする「ドット道東」の女性メンバー

 理想の実現に向けて奮闘する漁師や酪農家を巡るオホーツクの旅、千葉県から津別町に移住してローカルテレビ局を立ち上げ、町民と番組を作る男性のインタビュー、釧路市にUターンしたドット道東の女性メンバーがJR根室線(花咲線)で根室市まで旅をし、故郷を再発見するエッセー。地元だからこそ案内できるお店やお土産など、現在の道東を知る濃密な情報が詰め込まれている。

 ドット道東のメンバーが足を使って集めた人々の笑顔や誇らしげな表情を見ていると、不景気なニュースとは無縁な、ポテンシャルにあふれた道東の一面が見えてくる。中西さんは「このガイドブックが、登場する人たちと読者をつなぐ媒体となればうれしい」と意気込む。

非公式ガイド本の目次ページ

 A4判122ページで、1冊1650円。表紙カバーはオホーツク海の流氷や十勝の畑など道東を象徴する5種類の写真から選べる。詳しくは公式販売のホームページhttps://dotdoto.thebase.in/

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