教育費で家計が自転車操業の50代夫婦、老後資金をどう貯める?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、51歳、会社員の女性。立て続けにかかる4人のお子さんの教育費で、自分たちの老後資金をどうやって貯めればよいのわからないといいます。FPの氏家祥美氏がお答えします。

51歳女性です。課長職になり、主人よりも収入が増えましたが、保険などはそのままです。教育費などもまだまだかかりますが、どう自分たちの老後資金をためるべきか、自分に万一のことがあったときの保険はどうしたらいいかなど、何をどうしていけばいいか悩んでいます。

貯金はできるはずなのですが、できていません。子どもは4人。長男は社会人で奨学金は自分で返せる金額です。長女は大学3年ですが、第1種、第2種合計で13万借りており、夫婦共働きの間は第2種は返済を手伝う約束です(子どもには言ってませんが、第2種は全額親が返済するつもり)。次女は今年浪人しており、月10万の塾代がかかっています。大学は国公立、私立どちらにしても家から通う予定です。大学費用は奨学金予定で私立の場合はやはり月12~13万の奨学金を借りる必要があると思います。三女は来年高校生でスポーツをやる予定なので、月額2万ぐらい余分にかかる覚悟をしています。

【相談者プロフィール】

・女性、51歳、会社員、既婚

・同居家族について:夫52歳・会社員・手取り月23万、私・会社員・手取り月28万

子ども4人(15歳、19歳、21歳、23歳)

・住居の形態:持ち家(戸建て)

・毎月の世帯の手取り金額:51万(夫23万、妻28万)

・年間の世帯の手取りボーナス額:130万(夫30×2、妻35×2)

・毎月の世帯の支出の目安:50万5,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万5,000円

・食費:8万円(現金4万、クレジット4万)

・水道光熱費:2万円

・教育費:12万円(浪人10万、交通費1万、中学1万)

・保険料:0(夫給与天引2万、妻年払い10万)

・通信費:5万(インターネット、夫婦、子ども3人分)

・車両費:2万(ガソリン代、車検費用などはボーナスで)

・お小遣い:8万(夫現金2万+クレカ2万、妻現金1万+クレカ2万、子ども2名5,000円と2,000円)

・その他:大学生仕送り6万円(寮費)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:2万5,000円

・ボーナスからの年間貯蓄額:0円

・現在の貯蓄総額:200万円

・現在の投資総額:200万円(独身時代のMMF)

・現在の負債総額:子どもの奨学金含めず540万円(住宅7万5,000円×4年・団体信用保険は夫名義。、太陽光1万3,000円×8年、ボイラー6,000円×7年)


氏家:こんにちは。課長職となり収入アップ、おめでとうございます。ところが、家計的には教育費が家計を圧迫してとても苦しいところを迎えています。何とか乗り切っていけるように一緒に考えていきましょう。

支出の3分の1以上が教育費に消えている

お子さんが4人いるご相談者さんの家計は、今まさに教育費のピークに達しています。長男は社会人となったものの、あとの3人は、長女(大学3年生)、次女(予備校生)、3女(中学3年生)という状態です。

毎月の手取り月収は51万円(夫23万円、妻28万円)ですが、家計の中でも大きな割合を占める教育費から見ていきましょう。仕送りも教育費の一環として考えると、合計18万円になります。すぐに見直せそうもありません。
・教育費:12万円(浪人10万、交通費1万、中学1万)
・その他:大学生仕送り6万円(寮費)

2021年3月は通信費見直しのチャンス

月収51万円から教育費18万円を差し引いた残りは33万円です。ここから出ていく固定費は以下の合計14万5,000円。
・住居費:7万5,000円
・水道光熱費:2万円
・通信費:5万円(インターネット、夫婦、子ども3人分)

金額的に見ると、このなかで見直しの余地がありそうなのは通信費。2021年3月になると以前より予告されていた携帯各社の新料金プランがいよいよ出そろい、動き出します。ご夫婦とお子さん3人の携帯料金プランを格安スマホに見直すなどすれば、通信費が半額の2万5,000円程度に下げられるのではないでしょうか。家族割なども併用して、見直しを検討してみてください。

月収から教育費関連、固定費を差し引くと残りは18万5,000円になります。残りの項目は変動費にあたる以下の3つで、合計18万円。
・食費8万円(現金4万円、クレジット4万円)
・車両費2万円(ガソリン代。車検費用などはボーナスで)
・お小遣い8万円(夫現金2万+クレカ2万、妻現金1万+クレカ2万、子ども2名5,000円と2,000円)

こうしてほとんど貯蓄をする余地もないまま、収入がすべて消えていることが分かります。

記入いただいた項目には「毎月の貯蓄額2万5,000円」とありますが、実際は貯蓄した分が口座からマイナスになり、ボーナスなどから補っている状況だと思われます。もし、通信費を月に2万5,000円見直すことができたなら、毎月2万5,000円の貯蓄がそのまま残せることになりそうです。

ボーナスは年間130万円ありますが、妻の保険10万円や車検代などがボーナスから出ていきますし、貯蓄や生活費の穴埋めとして消えていると思われます。

教育費の自転車操業はまだまだ続く

では、この教育費のピークはいつまで続くのでしょうか。こちらのライフプラン表を見ながら一緒に考えていきましょう。

2021年4月からは、次女が大学生になります。受験費用や入学手続きなどで春先は出費がかさみますが、自宅通学で学費はすべて奨学金を利用する予定ですから、その後は家計からの持ち出しは無くなり、今まで支払っていた塾代10万円と交通費1万円が不要になります。一方、3女は高校に入ったら新たにスポーツをやる予定で毎月2万円の出費が増えます。差し引きすると、この年は月額9万円のプラスとなり、年間約108万円が貯められる計算となります。

2022年4月からは長女が社会人になります。毎月6万円の仕送りもなくなるのでほっとするところですが、ここから奨学金の返済が始まります。長女の借入総額は月額13万円×12カ月×4年間=合計624万円。これを本人がすべて返済するとなると、毎月約2万7,000円を20年間にわたって返済することになりますが、第2種奨学金についてはご夫婦で全額親が返してあげるつもりでいます。ここでは、次女の塾代が不要になってうまれた年間108万円を元手に、100万円×3年間で繰り上げ返済を終えることにしています。

2025年4月からは、次女が社会人になります。ちょうど長女の第2種奨学金が完済できたところなので、今度は次女の奨学金返済を100万円×3年間で行います。次女の第2種奨学金返済はこのプランだとご主人が59歳の年に完了します。

一方、2024年4月からは、3女が大学生となります。長女、次女と同じ進路をたどる場合、やはり月額12〜13万円の奨学金利用となるところですが、3女については第1種奨学金料だけにとどめます。ちょうどこの年に住宅ローン返済が終わるので、そのお金を教育費に充当していくと、第2種奨学金を借りなくて済むことになります。

このようにすると、ご相談者さんが59歳、ご主人が60歳になる年に、親としての奨学金返済義務を残さずに、3女が大学を卒業することになります。

このようにしていけば、かなりの自転車操業ではありますが、ご希望通り、お子さんたちの大学進学を叶えつつ、共働き期間中にお子さんたちの奨学金返済を繰上げ返済してあげることができます。

退職金と継続雇用があれば実現可能

このような形で教育資金を自転車操業で工面していくと、老後資金を貯められる時がまるでないことに気がつきます。現在の公的年金制度は65歳から支給されるため、60歳で退職した場合は年金をもらうまでの期間をどう過ごすのかがポイントになります。

60歳でまとまった退職金をもらえる場合や、65歳まで仕事を続けられる場合には、ライフプラン表のように奨学金を繰上げ返済してもなんとか65歳の年金受給までしのぐことができるでしょう。

しかし、60歳以降働けない場合には、あまり頑張って奨学金を繰上げ返済してしまうと自分たちの老後の生活が成り立たなくなる可能性があります。公的年金には「繰上げ受給」といって公的年金を前倒しでもらう方法もありますが、1回あたりの受給額が一生涯に渡って減ってしまうため、あまりお勧めできません。

退職金や就労継続など、ご夫婦の会社の制度を確認してみましょう。また、65歳からもらえる年金額についても「ねんきんネット」で確認してみてください。それとともに、家族全員の通信費の見直しと、ボーナスの使い道をいま一度見直すことにも挑戦してみましょう。

足元の家計を見直し、退職金や将来の働き方について確認できてから、改めて、お子さんにどこまで支援をしてあげられるのかをご夫婦で話し合ってみてください。

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