エース候補と期待されて10年目 鷹・武田翔太が取り組む「生命線」カーブの“復活“

ソフトバンク・武田翔太【写真:福谷佑介】

「カーブが1番大事かな、と。打者にケアをさせたい。カーブが自分の生命線」

今季への期待を抱かせる投球内容だった。25日に行われた「球春みやざきベースボールゲームズ」のロッテ戦で先発したソフトバンクの武田翔太投手。3回を投げて1安打無失点に封じる投球で、開幕ローテ入りに向けてアピールに成功した。

この日の武田は“代名詞“とも言えるカーブが冴えた。カウント球にも、追い込んでからの決め球としても使え、ロッテの打者を翻弄した。安打は初回1死から藤岡に浴びた中前安打の1本だけ。打者9人に抑え、球数はたった31球で3回を投げ終えた。

未来のエースとして期待されながら、近年は不本意な成績に終わってきた武田。その復活が期待される中で鍵を握るのが、この日、数多く投じていた「カーブ」だ。

武田の“代名詞“とも言えるカーブだが、ここ数年は武器になりきれていなかった。ボールを操り切れず、ストライクを取れない、打者に見切られることも多く、武田の投球スタイルの軸はスライダーとカットボールになっていた。

ただ、やはり「武田=カーブ」なのだ。右腕自身も「カーブが1番大事かな、と。打者にケアをさせたい。カーブが自分の生命線」と再認識した。キャンプ中のブルペンでの投球練習でもカーブを重点的に練習。試行錯誤しながら、再び武器とするべく取り組んできた。

キレとコントロールを失っていたカーブ、その原因は「力みかな、と」

近年、そのキレと制球が悪化していた要因を「1番は力みかな、と」と武田は分析する。「力を抜く練習、力みを外す練習をやっていかないといけない。力が入っていると監督が言っている『骨で投げる』というのもできなくなっちゃう。何をやってもあまりうまくいかない感じがあって、なんでかなと思ったら昔からの違いといえば、力みかなと」と実感し、力みを抜く意識を持った。

現に、この日は脱力したフォームからボールを投じられていた。ストレートの最速は145キロ止まりだったが、武田自身は「135キロを投げるくらいのフォームで140キロ中盤くらい投げられたらいい」と、手応えを口にしていた。

キャンプインを迎えたとき、武田の体つきはひと回り大きくなっていた。昨季は87キロだったが、現在は94キロ前後。肉体強化により、一冬を超えて7キロも増量した。「今まで10割の力で投げていたのを6、7割の力で投げられたらいいな、と。力を抜いてバランスよく投げて、同じ出力で投げられたら」との狙いだった。

脱力して投げることでバランス良く投げられ、カーブも取り戻せる。その上で肉体強化によって体の出力をアップさせ、球速や球の威力は変わらない。「例年足りないのは安定感。年間通して戦えるというのを見せられるようにやってきた」。今季にかける意気込みの現れだ。

武田も今季でプロ10年目を迎える。「若い選手も多くなってきて負けられない。彼らより若いつもりでやりたい。まずはアピールして開幕ローテに入れるようにやっていきたいです」。ツボにハマったときは手がつけられない。武田が本来の輝きを取り戻せば、ソフトバンク投手陣にとって大きな力になることは間違いないだろう。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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