東日本大震災から10年 心の復興を描いた映画「漂流ポスト」に込められた思い

漂流ポストの管理人・赤川勇治さん(左)と清水健斗監督

短編映画「漂流ポスト)(3月5日公開)の劇場公開を記念した記者会見が26日、都内で行われ、題材となった漂流ポストの管理人・赤川勇治(71)さんと、清水健斗監督(37)が出席した。

同映画は、2011年の東日本大震災の被災地である岩手・陸前高田の山奥にある赤川さんが切り盛りするガーデンカフェ森にある郵便ポストが題材。震災で亡くなった人への思いを受け止めるために設置されたが、今では震災に限らず最愛の人を亡くした人々が、故人への思いを手紙につづり、届ける場所になっている。

震災で親友を亡くした主人公・園美を女優・雪中梨世が演じ、“心の復興”を描いた同映画。ニース国際映画祭の最優秀外国語短編映画グランプリ、ロサンゼルス・インディペンデント映画祭の最優秀外国語短編映画などに輝いた。

現在はカフェ目当ての客も多いが、故人を思う人々は隣接した小屋で故人を思いながら手紙を書き、漂流ポストに投函するという。

手紙の数は現在800通あまり。今年は震災から10年を迎えるが、赤川さんは「ポストは心の復興なんです。投函する方たちの心に震災から5年も10年という区切りはない。毎日、闇から抜けようと必死になっている。僕も区切りをけっして付けるつもりはない」と誓った。

被災はしなかったものの、仕事で何度も岩手を訪れていた清水監督。他人事とは思えず、長期ボランティアにも参加するなかで、被災者の思いを風化させないために、メガホンを取った。

清水監督は「被災していない人たちが震災があったことを忘れないことが復興につながる気がする。特に被災していない人たちは他人事になってしまうことが多いと思うので、この映画を通してせめて3・11の前後だけは教訓とか思い出していただけたらと思う。外の人が忘れてないよ、というメッセージを送ることが一番いいのかなと思う。そのきっかけになれば」と語った。

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