コロナ鎖国で大幅値上げ、閑古鳥鳴く北朝鮮のレストラン

昨年1月からコロナ鎖国に突入した北朝鮮。食料品価格が高騰し、一般庶民はもちろんのこと、そこそこの暮らしをしていた人々も耐乏生活を強いられるほどの状況となっている。

1990年代後半の食糧危機「苦難の行軍」の再来かと囁かれる一方で、そこまでの状況ではないとする見方もある。程度の差はあれど食糧事情が逼迫していることは、北朝鮮国内からの情報でうかがい知れる。

米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋が伝えたのは、清津(チョンジン)市内の食堂の一斉値上げだ。

コロナ事態の長期化により食料品の不足がひどくなったことを受けて、市内の外貨食堂、国営食堂などで、すべてのメニューの値段が1000北朝鮮ウォン(約15円)以上値上げされた。

例えば、清津駅前にある水産物食堂は、青岩(チョンアム)区域人民委員会(区役所)の商業部所属の国営食堂で、結婚式や還暦のお祝いに重宝され、客足が絶えなかった。しかしコロナ鎖国後は目に見えて客足が遠のき、今回の値上げも相まって、開店休業状態となってしまったのことだ。

また、松坪(ソンピョン)区域の船員クラブ食堂、浦港(ポハン)区域のカルメギ(かもめ)食堂など、市内の有名レストランは基本セット1人前が20元(約330円)、麺類や餃子スープも25元(約410円)以上となり、客が来なくなってしまった。

別の情報筋の説明によると、値上げ幅は、外貨食堂が1人あたり1万5000北朝鮮ウォン(約225円)から2万北朝鮮ウォン(約300円)に、国営総合食堂が7000北朝鮮ウォン(約105円)から8000北朝鮮ウォン(約120円)だ。

情報筋は、各食堂が値上げに踏み切らざるを得ない状況を示す例として、食堂のテーブルごとに置かれていた、小瓶入りの唐辛子の粉や化学調味料が消えてしまったことを挙げた。市場で当たり前のように売られていたものですら、今では品薄となり、入手そのものが困難になったのだ。

ちなみに外貨食堂とは、タンス預金の外貨を使わせて、国内で流通する外貨を国庫に吸収するためのもので、当然支払いは外貨で行う。ちょっとしたファストフード店から、何百ドルもする高級レストランまで、様々な外貨食堂が存在するが、いずれもその日暮らしを強いられている庶民には縁遠いものだ。

一方で、個人が営む道端の食堂は、1品あたりの値段が2000北朝鮮ウォン(約30円)ほどで、外貨食堂や国営食堂に比べると安く、庶民でも冠婚葬祭など家族の行事のときに利用できるほどの価格帯だったが、ここの値段も3000北朝鮮ウォン(約45円)まで一斉に上がってしまい、庶民には高嶺の花となってしまった。

今回の急な値上げで客足が途絶えた食堂が閉業に追い込まれれば、庶民が気軽に外食を楽しめるところがなくなってしまう。

コロナ対策で市場での商売に支障が出て、移動統制で行商ができなくなるなど、収入が途絶えてしまった人が増え昨年夏ごろから食堂の客足が落ち始めたが、「今回の値上げが食堂にとって致命傷になった」と、情報筋は伝えている。

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