楽天野手陣も競争激化でポジション奪うのは誰? 若手の成長に鈴木大、銀次も危機感

楽天・辰己涼介(左)と黒川史陽【写真:荒川祐史】

「1番・中堅」を固めつつある辰己ら若手が猛アピール中

田中将大投手の8年ぶりの復帰で俄然盛り上がる楽天だが、キャンプ、練習試合を通じ野手陣でも若手が急成長している。3年目・24歳の辰己涼介外野手は石井一久新監督から“キャンプMVP”に選ばれ、2年目・19歳の黒川史陽内野手は25日のDeNAとの練習試合で5打数5安打の大当たり。これを受け中堅、ベテランの目の色が変わった。石井監督にとってはしてやったりの展開だ。

26日のヤクルトとの練習試合(浦添)では、鈴木大地内野手が「3番・一塁」でスタメン出場し、3回1死満塁での第2打席で左前適時打。4回2死一、二塁の第3打席でも一塁強襲の連続タイムリーを放った。それでも、ロッテからFA移籍し2年目を迎えた31歳は、前日の黒川の5打数5安打もあり「周りがすごく打っているので、置いていかれないように、アピールできるようにと思っていた」、「いろいろ試している部分もあるが、結果を残さないといけない。結果にもこだわっていきたい」と危機感を口にした。

この試合では、途中から出場した生え抜き16年目・33歳の銀次内野手も、6回に右前適時打、8回に右翼席へソロと存在感をアピール。石井監督は「若手の調子がいい中で、中堅の選手もしっかり調整して結果を残してくれているのは頼もしい」と目を細め、「打てるところだけを待ってスイングするという我慢ができるあたり、やっぱり違うな、というところを見せてくれている。若手も彼らの背中を見て、もう1ランク上がってほしい」と評した。

楽天・鈴木大地(左)と銀次【写真:荒川祐史】

黒川が二塁のポジションを奪うなら浅村は一塁、DHの可能性も

鈴木大は昨季、三塁手としてベストナインとゴールデングラブ賞に輝く一方、一塁手としても36試合スタメン出場した。もともと内野ならどこでも、必要とあれば外野も守れるユーティリティプレーヤーである。一方、2017年にベストナインとゴールデングラブ賞をダブル受賞した銀次は、昨季の鈴木大加入の影響もあって88試合出場にとどまり、巻き返しを誓っているところだ。

売り出し中の黒川は二塁が本職で、当面は主砲の浅村栄斗内野手とポジションを争う。しかし、もし黒川が開幕までレギュラーにふさわしいと認められる活躍を続けた場合、浅村が一塁やDHに回るケースも考えられ、鈴木大や銀次にとっても他人事ではない。

辰己が「1番・中堅」のスポットを固めつつある外野もしかり。左翼には今季から4年契約を結んだ島内宏明外野手が構えており、残りのポジションを狙って、巧打の24歳・小郷裕哉外野手が連日活躍。ライバルたちに比べるとやや目立っていなかったスイッチヒッターの田中和基外野手も、石井監督から「凡打を含めて内容のある打席が多い。カウント3-2から、しっかり自分でボールと判断して見送った球をストライクと判定されても、その見逃し方が良い」と称賛されている。コロナ禍で入国のメドが立っていない新外国人のルスネイ・カスティーヨとブランドン・ディクソン(登録は内野)が来日すれば、競争はさらに激化。場合によっては島内さえ安泰とはいえなくなる。

石井監督がキャンプイン当初から「外国人選手がいない分、ポジションを奪い合ってくれれば逆に楽しみ」と望んでいた以上の展開だろう。田中将やドラフト1位の早川隆久投手(早大)らが加わった投手陣も同様で、昨季後半失速し4位に終わった楽天が、大幅な戦力アップを果たしつつあるのは間違いない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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