『建物内で迷わせずに』 行き先案内アプリ 車いす視点を反映

デンソーウェーブと長大が共同開発

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QRコードにスマホをかざす鬼丸さん。画面には方向を示す矢印が表示される=長崎市文教町、長崎大

 産業機器メーカーのデンソーウェーブ(愛知県)と長崎大は、建物内で迷わせずに行き先を案内するスマートフォンアプリを共同開発した。QRコードと拡張現実(AR)の技術を融合し、利用者の事情や好みに合わせてルートを選択させる。研究開発には学生たちが深く関与した。

 開発したアプリの名称は「Quest touR(クエストツアー)」。QRコードはかつて同社が開発し商標登録している。
 管理者はあらかじめ場所情報を入れたQRコードを通路の分岐などに掲示しておく。使い方はこうだ。来訪者はまずアプリに目的の部屋とルートの条件を選択入力。建物入り口のQRコードをスマホカメラで読み込むと、現実空間を映している画面に仮想空間の矢印が重なって現れる。矢印に従って歩き、分岐に差しかかるとQRコードの存在が画面表示や音声で通知される。再び読み込めば、次の方向を示す矢印が現れ、これを目的地まで繰り返す。
 2019年度に同大情報データ科学部、小林透教授(情報工学)の研究室の学生らが「既存の地図アプリは施設の前までしか案内せず、目的の部屋までたどり着けない」と問題提起し発案。技術サポートをした同社は20年度から、同研究室と具現化に乗り出した。ソフトウエア開発のアドミン(長崎市)も協力した。
 具現化の中心を担ったのは同研究室の鬼丸禎史さん(26)=同大大学院修士2年=。車いすで生活する自らの視点を反映し、利用者別に最適なルートを人工知能(AI)が自動計算するソフトを実装。最短の「おすすめ」、エレベーターを使う「バリアフリー」、階段で運動したい人向けの「エクササイズ」の3択から選べるようにした。
 建物内でも高精度で人の位置が分かるよう、既設の無線LANの電波強度や気圧、歩数、所要時間を計測できるスマホの機能を活用。電波発信機器を複数新設しなくてもQRコードを紙に印刷するだけで済み、低コスト化した。
 鬼丸さんは「初めて訪れるときや体調が優れないときなど、移動に困る人の役に立てばうれしい」。小林研究室は実用化に向け改良を続け、実証実験エリアを同大構内に広げたい考え。デンソーウェーブ長崎ソリューション開発センターは「公共施設やバス停など街中にQRコードを置き、この機能を付加すれば便利になる」としている。

Quest touRの全体イメージ(長崎大・小林透教授提供)