吉村知事推奨のアゴかけマスクは”自爆”だ! 専門家が指摘「予防は不十分」

「マスク会食」普及に躍起の吉村洋文知事

「マスク会食」普及に前のめり…。政府は26日、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象地域のうち、大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、福岡の6府県を今月末で解除すると決定した。これを受け大阪府は新型コロナ対策本部会議を開催。段階的に制約が解除される中、吉村洋文知事(45)は会食におけるマスクの重要性を強調し、府民に“アゴかけマスク会食”を要請した。しかし、この方法にはネット上だけではなく、専門家からも疑問符が突き付けられた。

緊急事態宣言の解除を受け、府は段階的に制約を緩和。飲食店の営業時間の短縮要請を府内全域から大阪市内に絞った上で、3月21日まで午後9時までの営業とすることなどを決定した。

さらに、府は新型コロナ対応の改正特別措置法に基づく府民への呼び掛けとして、新たに「マスク会食」を導入した。会食は4人以下とし、会話をする際はマスクを着用し、鼻と口を覆うよう強く求めた。

会議に先立ち吉村氏は「飲食の場面などで飛沫感染をいかに防ぐかということに、より集中した対策を取ることが大事」として、マスクの表面をつまんでアゴにずらす動作を実演。食べる際に耳からマスクを外すマスク会食が一向に普及しない現状への打開策として“アゴかけマスク会食”を呼びかけた。

その効果について、「マスクの表面は触らない方がいいけど、(手が)キレイであることを前提に食べる時としゃべる時にずらす。100%マスク会食がいいけど、広まっていない。(アゴかけは)マスク会食を現実的にできるやり方で、感染防止効果も十分あると専門家のお墨付きもいただいている。一部からは『またおかしなこと言い始めた』と言われるかもしれないが、なんとか広めたい」と熱弁を振るっていた。

しかし、案の定というべきかネット上では「マスクの取り扱いが不適切」「不衛生だ」などと批判が噴出。

結局、この日の会議では「マスクの表面を触るのはお勧めしない」「孤食・黙食が有効」などの意見が識者から相次ぎ「表面には触らずにひもを持って上げ下げする」という“折衷案”で着地点を見いだした。

では、実際にアゴかけマスクはやった方がいいのか?

大阪市の上嶋内科消化器科クリニックの上嶋弾院長は「(先週の会議で)専門家の方も『他人に感染させないためには』と何度も仰っておられるように、人にうつさない部分では有効でしょう。でも、自分自身が感染しないという意味では不十分。アゴにずらすというのは感染症的によろしくない」と指摘する。

飛沫で飛んできたウイルスはマスクの表面はもちろん、額や首などマスクで覆えない部分にも付着している。マスクをずらす行為によってそれらを拾い、元に戻すことで自分自身が感染する可能性があるという。

上嶋院長によると、海外ではマスクを鼻からずらす行為でさえ、パンツから男性器が露出しているのと同じだと教育されるくらい間違った使い方とされているそうだ。

「医師の間では少しでもリスクを下げるために、何があってもマスクを下げるということはしない。着ける時は着ける、外す時には気を付けてしっかり外すというのが身に染みついている。それくらい医師にとっては違和感のある行為なのです」(同)

吉村氏は“アゴかけマスク会食”の普及に意欲を見せているが、問題なのは“アゴにずらす”行為なのでは…。

© 株式会社東京スポーツ新聞社