高まる住宅需要、新築価格と中古価格の性質の違いを知っていますか?

日本では新築住宅を購入する人が多く、購入に際しては新築住宅の価格だけを調べる人もいるかもしれません。しかし、新築住宅は、住んだ瞬間から中古住宅になるので、住宅を購入する人は中古住宅の価格についても知っておいたほうが良いように思います。今回は、新築住宅と中古住宅の価格の違いを整理したいと思います。


住宅購入者は増加見込み

コロナ禍によって2020年前半の住宅の売行きは落ち込みました。しかし、その理由は、多くの人が購入を先延ばしにしたためであり、感染拡大がいったん落ち着いた2020年秋頃からは、反動で売行きをのばしています。

これに加えて、巣ごもり需要や、テレワークの影響などで、現在の住まいの広さや設備に不満を持つ人が増加しています。

今の住宅に対する不満についてのアンケートでは「仕事専用スペースが欲しくなった」という意見が増加しました。また、今までは不満の上位にはなかった「通信環境の良い家に住みたくなった」という意見も多くなっています(図表1)。

コロナ禍の前でも、住宅を購入する人は、ライフステージの変化や生活環境の向上を理由にあげる人の割合が高くなっていましたが、コロナ禍の影響を受けて、生活環境を見直して、住宅を購入しようする人はさらに増加するのではないでしょうか。

また、日本では新築住宅が、中古住宅より好まれています。2018年の調査では、新築住宅の着工は94万戸であり、対して中古住宅の流通は16万戸でした。ここ10年ほどは、新築住宅が全体に占める割合は80%半ばで推移しています(図表2)。

しかし、たとえ新築住宅のみを検討するのであっても、中古住宅の価格についても心にとめておいたほうが良いように思います。

住宅の品質確保の促進等に関する法律によると、「新築住宅」とは、「新たに建設された住宅であって、建設工事の完了の日から1年以内、かつ、人が住んだことのない住宅」のことをいいます。そして、「中古住宅」とは、「建設工事の完了の日から1年を超えた住宅、または人が住んだことのある住宅」のことをいいます。つまり、新築住宅は、住んだ瞬間から、中古住宅となってしまうのです。

ですから、新築住宅、中古住宅のいずれを買ったとしても、住み始めた後の住宅価格については中古住宅の価格として考えなければなりません。

ところで、新築住宅の価格と中古住宅の価格は、求め方が大きく異なります。

新築住宅の価格は、「その土地と建物を作るために必要となった費用」に「売り主の利益」を上乗せした額ですが、複数戸の場合はその金額を「作った住宅の戸数に配分」して設定されます。
新築分譲マンションでも、分譲戸建でも、注文住宅でも考え方は同じです。新築分譲マンションであれば、土地の上に一棟の建物を建てて、建物を分けて1戸ずつの価格にします。また、戸建分譲であれば、先に土地を分けてから、建物を別々に建てて、1戸ずつの価格にします。

なお、新築住宅の価格決定権は売り主にあり、販売価格が相場を多少上回っていたとしても、「必要となった費用」と「売り主の利益」が得られるように設定されます。例えば、建物が高級仕様で、相場より多くの費用がかけられれば、新築住宅の価格も高くなります。

一方、中古住宅の価格は、「競争力のある物件かどうか」、によって求め方が違います(図表3)。

まず、競争力のない中古住宅の場合は、「建物の劣化の程度を反映した土地建物の価額」を求めます。建物価値の計算は、通常必要となる費用をもとに計算する場合が多くなります。つまり、新築の際に通常を超える費用がかけられたとしても、その分の魅力や付加価値がなければ、その分は考慮されずに、新築で購入したときの価格から大きく下落する場合があります。

一方で、競争力のある中古住宅の価格は、「複数の購入希望者の中で提示される最も高い購入希望額」を予想して設定します。例えば中古住宅の売買が多く成立している人気のある魅力的なエリアの中古住宅がこれにあたり、近い場所や同じマンション内に取引された似た条件の中古住宅の売買価格を参考にすることが多くあります。この場合は、ほとんどのケースで、「建物の劣化の程度を反映した土地建物の価額」を上回ります。

なお、中古住宅には、「前の居住者の使用状態のまま販売される場合」と、「追加の費用をかけて販売される場合」があります。かけられた追加の費用が多すぎないか、新築の価格に近づきすぎていないか、などに注意が必要です。

住宅を買う際、買った後の利用や生活について、思いを巡らせるのは大変楽しい作業です。しかし、多くの人はその住宅とずっと長く付き合うことになりますが、時には転勤等で止むを得ず売却を余儀なくされることもあります。同じエリアの中古住宅の価格は、新築住宅の価格が将来どうなるか、を考えるときに参考にできます。例え、新築住宅だけを検討しているとしても、近隣の築10年、築20年の中古住宅価格も確認しておくと良いのではないでしょうか。

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