40歳になっても止まらぬ進化 鷹・和田が取り組む新球種習得「大事なボールに」

オリックス戦に登板したソフトバンク・和田毅【写真:福谷佑介】

昨季は100球前後で交代も「球数、イニングを伸ばしていきたい」

本当に40歳か? そう首を傾げたくなるような投球だった。最高気温14度、寒風吹くSOKKENスタジアムでソフトバンクの和田毅投手が上々の仕上がり具合を披露した。オリックスを相手に3回を投げて2安打1失点。失点も3回にセーフティースクイズを決められて奪われたもので、それ以外はほぼ完璧と言えるものだった。

今季初の対外試合登板を終えた左腕は「ワインドアップ、セット、いろいろ経験できていい試合になったと思います」とまずは充実の表情。そして「体の状態は昨年を考えると違っている。寒さの中で昨年は嫌だなと思ったけど、今日は苦もなく投げられた。違う自分でいられている」と、今年ここまでのコンディションの良さを改めて感じたようだ。

2月21日に40歳になった和田。だが、加齢によって衰えるどころか、今年、また新たな進化を遂げようとしている。そのスタイルが、この日の投球にも現れていた。

この日、オリックス打線を相手に多投したのがカーブだった。オフの間から自主トレ、キャンプと試行錯誤してきたボール。これまでも持ち球に加えようとしてきたが、なかなか上手くいかず。自主トレを共に行う後輩の笠谷俊介投手に教えを乞うて、握りを伝授してもらい、工夫を凝らしてきた。

この日の最大のテーマにも、このカーブを置いた。「前回と同じようにカーブを使っていきたいとテーマに置いて投げました。調子はいい方ではなかったですけど、そこそこ抑えることは出来た」。2回先頭の吉田正をそのカーブでタイミングを外して右飛に打ち取るなど、カウント球、そして追い込んでからの勝負球としてもカーブを使った。

「相手が迷ってくれればいいなと思いますし、追い込んでからカーブがあると思ってくれるだけでも違ってくる」

「今年はカーブをすごく大事なボールにしていきたいなと思っている。今までスライダーやチェンジアップで(タイミングを)外していたので、もう1個(球種が)増えるだけで打ち取れる確率が上がる。相手が迷ってくれればいいなと思いますし、追い込んでからカーブがあると思ってくれるだけでも違ってくると思う」

和田といえば球速以上に速さを感じると言われる140キロ台中盤の真っ直ぐ、スライダー、そしてチェンジアップが投球の中心。カーブが使えるようになり、ここに加えることができれば、投球の幅はグッと広がる。40歳にしてなお、投手として成長しようという和田の向上心が、このカーブに現れている。

この日は予定イニングの3回を投げ終えると、ブルペンに向かい、さらに29球を投げ込んだ。これも今年の状態の良さの現れか。「昨年は登板後にブルペンに入ることはなかった。徐々に増やしていければ、100球も苦にならずに投げられると思う」と言う。

昨季、和田は先発しても100球前後でマウンドを降りることがほとんどだった。以前に左肩を故障していることから、首脳陣の配慮もあったのだが、本人としてはやはり不本意だった。「90球、100球とかで勢いが落ちるのは避けたい。球数、イニングを伸ばしていきたい」。40歳であっても100球以上投げ、完投や完封さえも狙える投手でありたい。そんな思いが溢れている。

今年はことさら表情が明るく見える。状態の良さから「気をつけて、調子に乗らないようにしないといけないですね」と、自らを戒めるほどだ。残り2人となった「松坂世代」。ただ、40歳になっても和田毅は若々しくあり、そして、進化しようとしている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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