【人生を変えることば選び】還暦で引退の時代じゃない 年下には「預ける」

長く働くシニアも増えてきた

【ほめ達・松本秀男 人生を変えることば選び】人生百年時代。そしてシニアがどんどん元気になってきています。「サザエさん」の磯野波平さんが54歳の設定だというから驚きますね。今どき還暦を過ぎても波平さんよりもパワフルです。労働力人口の減少を考えても、還暦で引退という時代もとうの昔に終わったのではないでしょうか。役職定年はあるとして、シニアの経験が生かされる時代です。

となると、若い人たちに交じっての仕事となります。場合によっては年下上司に付くことも。昭和の時代の勇者たちのように、「オレの若いころは!」「オレに言わせりゃよ!」などと分かりやすいキャラが通用しないことを、今のシニアは分かっております。なぜなら上からさんざんやられてきましたから。

とはいえ、では若い連中とどう付き合ったらよいものか。妙に遠慮したり小さくなったりするのも、せっかく積み重ねてきた知識や経験がもったいない。そこで重要になるのが「応援することば選び」です。

若い人たちと肩を並べて働きながら、知識や経験があるぶん、前に付いたり後ろに付いたりしながら応援をする。

例えば何か案件があった時に、「これはこうしたら簡単だ!」とこちらで答えを出さずに、いったん相手に預けてみる。

「どう思う?」「どんな段取りがいいかね?」「どうやったらベストだろ?」「任せていいかな?」

信頼や責任、権限委譲が人を育てます。そして相手が何かしらいい答えや行動を見せたらすかさずほめる。

「面白いねえ!」「いいじゃん」「それワクワクするなあ」「完璧!」

その上で言葉だけでなく一緒に汗をかく。

これからの時代、縦の指示命令系統だけではいいパフォーマンスが生まれません。チームとしてそれぞれの能力を生かし切ることが大切。チームビルディングこそ大切と、どの企業でも気づき始めました。

ただこれ、実は昔から一緒ですよね。下町のおみこしだってそうです。私も好きでずっと担いでいますが、老若男女、力を出し合って一つのみこしを担ぐ。力がある人、ない人、声のでかい人、小さい人、疲れたら交代で担ぎ切る。終われば笑顔で無礼講です。

シニアのみなさん(私もですが)、まだまだ担ぐみこしも若い衆も待っています。景気良く元気にまいりましょう!

☆まつもと・ひでお 1961年東京都生まれ。国学院大学文学部卒業後、さだまさし氏の制作担当マネジャー、ガソリンスタンド経営を経て、45歳で外資の損害保険会社に入社。トップ営業マンとなり数々の実績を作る。現在は一般社団法人・日本ほめる達人協会専務理事を務め、企業セミナーなど多方面で活躍中。著書に「できる大人のことばの選び方」や「できる大人は『ひと言』加える」など。

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