深刻な老朽化、予定地に断層 リミット迫る大村新市庁舎計画 再検討で事業費不安も

雨漏り対策のためビニールが貼られた階段部=大村市役所

 建設予定地に断層が見つかり、建設地の再検討が進められている大村市の新市庁舎建設計画。再検討の方針が示されてから1年となった先月、市は候補地案7カ所を示し、今月には市民アンケートも実施した。現状で2025年度着工、27年度供用開始を目指す計画の現状を取材した。

■リミットは2029年
 「ここはかなりひどいかな」-。大村市役所本館(玖島1丁目)の階段部。普段市民は立ち入らない場所だが、雨漏り対策のため天井にはビニールが貼り付けられ、雨水をバケツにためるためのひもが垂れ下がっている。新庁舎整備室の担当者は「各所の雨漏りに加え、バリアフリー対応なども不十分」と指摘する。
 1964年建設の現庁舎は老朽化が深刻。13日に福島、宮城両県を襲った地震と同程度の震度6強で、倒壊または崩壊する危険性があるとされる。コンクリート強度を考えると「2029年がリミット」(同室)という。
 新庁舎建設基本計画では、現庁舎裏の大村ボート第5駐車場で22年度の完成を目指していた。ただ地質調査の結果、予定地に断層があることが発覚。活断層かは不明だが、市は20年1月末に当初計画地を含めゼロベースで見直す考えを示した。

■候補地7カ所
 現在、市が示している候補地案は▽大村公園の一部▽森園公園▽古賀島スポーツ広場▽現庁舎周辺▽市民プール、森園ファミリースポーツ広場▽森園運動広場(県消防学校グラウンドの一部)、森園ファミリースポーツ広場▽上下水道局周辺の計7カ所。いずれも想定規模に必要な面積がある市有地44カ所の中から、人口の集中度合いや現状などを考慮して絞り込んだ。
 今月には市内8地区計6765人を対象に、7カ所の是非を問うアンケートを実施し、約3千人が回答。約8割が「7カ所の候補地案でよい」とした。一方で「ふさわしくない場所」として100件以上の回答があったのは、大村公園の一部、森園公園、市民プールの3カ所。「公園は残してほしい」「子どもの遊び場がなくなる」などの理由だった。「追加したい場所」では、九州新幹線長崎ルート新大村駅が63件で最多だった。
 このほか、上下水道局やこどもセンターなど役場機能が分散していることについて約5割が「集約すべき」、建設候補地で重視することについて7割近くが「利便性」と回答した。

大村市新市庁舎の建設候補地案

■事業費に影響
 また、計画のずれ込みは事業費にも影響を及ぼしている。当初案での概算事業費は約108億円で、市は熊本地震を受けた国の「市町村役場機能緊急保全事業」を活用し、13億4千万円分の交付税措置を受ける予定だった。だが、同事業は本年度までに実施設計に着手することが条件で、活用は見込めなくなった。同室は「ここまで手厚い支援は現状ほかにない。県市長会を通じて新たな財政支援制度の創設を国に要望している」とする。
 今後、ボーリング調査などによる候補地の詳細な評価や外部委員会による検討、市民説明会などを通じて22年度にも建設地を決定。建設規模の決定や基本計画の策定も並行して進め、具体的な設計内容や総事業費などを詰めていく。同室は「建設地は市民が納得できる場所にしたい。そのためにも検討のプロセスを“見える化”し、評価基準も見直していく」としている。

 


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