「よく分からない打ち取り方」って? 鷹の開幕投手・石川柊太の独特の考え方とは…

ソフトバンク・石川柊太【写真:福谷佑介】

27日のオリックス戦に登板して3回を無失点に抑えた石川柊太

開幕に向けて、まずまずの再スタートを切ったと言えるだろう。27日にSOKKENスタジアムで行われたオリックスとの練習試合。ソフトバンクの2番手で登板したのは、3月26日のロッテ戦での開幕投手に決まっている石川柊太投手だった。

キャンプ中盤に指先に出来たマメの影響で実戦登板から離れていた右腕が今季初めて対外試合のマウンドに上がった。和田毅投手のあとを受けて2番手で登板すると、予定の3イニングを投げて1安打無失点。登板後は「そういうのも含めて問題はなかった。1番気にしていたところですけど、問題なかった。今日はそれで十分くらい」と表情を緩めた。

その石川が語ったコメントの中に、ふと“石川らしさ”が感じられる一節があった。

「結果、ゼロというところはこだわっているんで良かったんじゃないですかね。内容に関しては、なんて言うんですかね…、シーズン中も思い切り投げて打ち取るみたいなのがあるんで“よく分からない打ち取り方”というところでは自分らしさが出たんじゃないですかね」

はてさて、石川の言う“よく分からない打ち取り方”とは何なのだろうか。

「めちゃめちゃアバウトです。2分割くらいです。内外か高低か、くらいしかやっていません」

「よく分からない、まさによく分からない、です。結果良かった、というのかな。内容が悪かったのに結果が良かった、という話がよくあるじゃないですか。自分が思った球じゃない球がいった時に打ち取った、詰まらせたとか、そう言うのが“よく分からない打ち取り方”ですね」

野球とは相手があるスポーツで、投手がどれだけ狙い通りに投げても打者に痛打されることがあれば、逆に意図しない球になっても打ち取ることもある。この後者が石川の言う“良く分からない打ち取り方”なのだという。

石川の考え方は独特で、そして新鮮だ。

「よく分からなくても真ん中付近に投げておけば、なんとかなるんじゃないかと思って投げているんで。コースで、じゃなくて、ボールで幅を出すって言うんですかね。ブルペンでもほとんど真ん中にしか投げないですし、試合中も拓也にそんなに(コースに)寄らないで、という話もしています。めちゃめちゃアバウト。2分割くらいです。内外か高低か、くらいしかやっていません」

ソフトバンク・石川柊太【写真:代表撮影】

「真ん中付近で打たれなかったって、それってよく分からないじゃないですか」

投球する際、ストライクゾーンを9分割にする、とよく言われる。テレビ中継などを見ていても、ストライクゾーンはコース、高さで9分割にされている。だが、マウンド上にいる石川の頭の中では2分割。内か外か、もしくは高いか低いか、しか深く意識していないという。

真っ直ぐ、変化球どちらにしてもボールの力があるからできるスタイルなのかもしれない。石川自身も「ボールの吹き上がりだったり、シュートしたり、(ボールの動きにも)ムラがあったり、カーブがあったり、フォークがあったり、投球リズムがあったり。色んな要素があって、真ん中付近でも打ち取れるっていう感覚なんじゃないかな。自分としては甘かった、でも打ち取った、というのはシーズン中でもよくあることなんで」と言う。

確かに石川のストレートは150キロを超え、なおかつシュート回転気味で手元で動く。これに加えて武器とするパワーカーブやフォーク、そしてスライダーとカットボールの中間のような球である「スラット」もある。そして異常なほどに早い投球テンポでも打者を幻惑する。その結集として実現する“よく分からない打ち取り方”なのだろう。

「昨年、真ん中付近に投げたボールで1番打ち取ったのが多かったらしいんで。真ん中付近で打たれなかったって、それってよく分からないじゃないですか。そういうことです」と言う石川。5年連続の日本一を目指すソフトバンクで開幕投手を託された石川柊太。その独特の感性に注目しても面白い。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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