就任1年・千葉明ASEAN大使に聞く インド、太平洋に注目

 東南アジア諸国連合(ASEAN)政府代表部特命全権大使に千葉明氏が就任して1年が経過した。沖縄と地理的に近く、関係の深いASEANの、最近の状況を千葉氏から聞いた。
 千葉氏によると、ASEANを取り巻く最もホットな課題は「インド太平洋」という。日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」という考え方は、欧米からも賛同を得ている。ASEANは2019年に「インド太平洋に関するアセアン・アウトルック」を発表し、二つの大洋をつなぐ開放的で、法の支配を重視する秩序を支持した。
 しかし中国は、インド太平洋という言葉は中国包囲網を連想させるとして、強く反対しているという。「その背景には、日本、アメリカ、オーストラリア、そしてインドが、あらゆる分野で協力を深めていることがある」と千葉氏。中国はこれを「ミニNATO(北大西洋条約機構)」と呼んで、反中国の軍事同盟のような扱いをしているという。千葉氏は「法的な制約がある日本や、非同盟外交のインドが軍事同盟をつくるはずがなく、これは中国の一方的な言い分だ」と指摘する。
 千葉氏は、中国が南シナ海の公海にあるサンゴ礁を埋め立てて軍事基地を建設し、東南アジアから日本に向かうシーレーンに一国だけで影響力を及ぼそうとしていることを説明する。「それに待ったをかける日米豪印の協力は中国にとって不都合だ。東南アジアから日本本土に向かう海路上には、沖縄県の尖閣諸島があり、中国は現状変更を目指して、連日尖閣近海に侵入を試みている」と語る。ASEANで取り扱う「インド太平洋」は、沖縄の安全に直結する問題という。
 千葉氏は日本の外交官。東大法学部卒。カリフォルニア大学バークレー校で修士の学位を取得し、北京大学で中国語の研修を受けた。ロサンゼルス総領事などを経て、ASEAN政府代表部特命全権大使に就任した。
(当銘貞夫ロサンゼルス通信員)

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