「教育費を貯めるなら?」保険・ジュニアNISA・特定口座、特徴をFPが解説

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、32歳、会社員の女性。もうすぐ第一子が誕生するという相談者。教育費を貯めるのに、どんな金融商品を利用すれば効果的か知りたいとのこと。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

もうすぐ第一子が誕生します。高校までは毎月の家計から捻出する予定ですが、大学や専門学校進学時のお金は300万円準備できると安心と以前聞いたことがあるので、子どもが生まれてからすぐにアクションを取りたいと思っています。我が家の財務状況でどのように教育資金を準備するのが最適でしょうか? 妻の年収が900万円弱のため、児童手当の所得制限限度額に引っ掛かり、月5,000円の支給額となると思われます。ここに記載した方法以外でも、推奨するものがあれば教えていただきたいです。

選択肢1:低解約払戻金型の終身保険(15年・円建て)

選択肢2:ジュニアNISA

選択肢3:未成年の特定口座

ジュニアNISAは2023年で制度が終了したあとにどうなるか不透明ですが、子どもにも投資について知るきっかけになればと思っています。また、以下の事情より、今回は家計の見直しについてはあまり大幅に変えることは考えていません。

1.地方なので車が必須の生活です。

2.妻は現在産休育休中です。まだ出産手当金・育児休業給付金を受け取っていないので、金額がどの程度になるかは掴めていません。ここに記載させていただいたのは、フルタイム時の実績です。ですが、毎月余っていた10万円ほどを貯蓄に回していましたので、それが丸々なくなって、投信積立は続けられると試算しております。妻が復帰するまでは現金比率が下がっていく見込みですが、もしリスキーであれば毎月の積立額の減額も視野に入れています。

よろしくお願いいたします。

※一部内容を編集しています。

【相談者プロフィール】

・女性、32歳、会社員、既婚

・同居家族について:夫(30歳)・会社員(手取り20万円)

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:53万円 (夫20万円、妻33万円※産休前)

・年間の世帯の手取りボーナス額:300万円 (夫80万円、妻:220万円※産休前)

・毎月の世帯の支出の目安:30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:6万5,000円

・食費:5万円

・水道光熱費:2万5,000円

・保険料:1万3,000円(車2台分の保険1万1,000円、妻医療保険2,000円)

・通信費:4,000円(スマホ代はそれぞれのお小遣いから)

・車両費:6万円(2台分のガソリン代3万円、駐車場4,000円、高速代2万6,000円)

・お小遣い:7万円(夫妻ともに3万5,000円)

・その他:1万3,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:19万2,000円

(貯金10万円、投資信託9万2,000円)※産休育休中は投信のみ継続予定

・ボーナスからの年間貯蓄額:300万円

・現在の貯蓄総額:1,000万円

・現在の投資総額:1,060万円

(株式100万円、米国ETF100万円、投資信託770万円、確定拠出年金90万円)

・現在の負債総額:200万円(夫:第2種奨学金)


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。第一子おめでとうございます。家庭が賑やかになり、楽しみですね。

今回は、教育費の効果的な準備方法についてのご相談です。既に具体的に検討されていますので、それぞれの金融商品の特徴を解説しながら、一緒に最適な準備方法について考えていきましょう。

選択肢1:低解約払戻金型の終身保険(15年・円建て)

【特徴】
〇保障(死亡・高度障害・特定疾病等)と合わせて準備出来る
〇満期が無いため、教育費にも老後資金にも活用できる
〇保険料の払込期間を短くすることで、返戻率が高くなる
〇外貨建ての商品もある(為替リスクあり)

【注意点】
〇短期で解約すると払い込む保険料を大幅に下回ることも
〇円建ての場合、予定利率が低くそこまで貯蓄性がない
〇外貨建ての場合、為替リスクがあるので、為替によっては払い込んだ保険料を下回ることも

こちらは、保険を活用しての教育資金準備の方法です。特徴としては、保障としての機能を持ち、一定期間を過ぎると、払い込んだ保険料よりも解約した時に戻ってくる解約返戻金の額が大きくなるので、将来的に解約をすることで教育資金や老後資金に充てられることできます。

特に満期があるわけでは無いので、必要な時に解約して手元に現金化することが可能となります。払込期間を短くすればするほど返戻率は上がるので、ライフプランを考慮して上で、拠出出来る金額と照らし合わせて、可能であれば短期間での払込みがおススメです。ご相談者が検討されている「円建て」だけではなく、「外貨建て」の商品もあります。円よりも高い利率で運用されるので、外貨ベースでの返戻率は円建てと比べると高くなります。為替リスクを考慮した上で活用すると効果的です。

また、保険会社によっては、死亡や高度障害だけでなく、ガンや急性心筋梗塞、脳卒中などの3大疾病や介護などの保障もカバーされる保険もあります。

昨今、円が低金利の為、予定利率が低く将来の返戻率が高くないため、学資保険や円建ての終身保険より、外貨建て終身保険を活用される方が増えてきています。外貨建ての終身保険の注意点としては、為替リスクがあるという点です。教育費として準備する場合は、必要な時期が決まっています。必要な時に極端に円高になっていると、場合によっては払い込んだ保険料を下回るリスクがあります。リスクを回避するためにも、その時の為替の状況によって、他の預貯金等からも教育費として捻出できる準備をした上で活用すると良いでしょう。上手く活用出来れば、保障が付加されるので、その分掛け捨ての保障を下げるなど、保険コストの見直しにも繋がり、また為替も円安になればよりメリットを享受することが出来ます。

選択肢2:ジュニアNISA

【特徴】
〇運用益が非課税となる(通常、譲渡益や配当金に対して20.315%課税)
〇非課税になる投資金額は年間80万円が上限
〇非課税期間は最長5年間(ロールオーバーにより20歳まで非課税運用可能)
〇投資対象は上場株式や株式投資信託

【注意点】
〇18歳まで途中引き出しが出来ない(課税対象となる)
〇金融機関の変更が出来ない(一度口座を廃止する必要がある)
〇損益通算ができない
〇新たな買い付けは2023年まで

ジュニアNISAとは、未成年のお子さまのための「少額投資非課税制度」です。ジュニアNISA口座で投資すると、そのなかで得た利益や、配当金・分配金にかかる税金が非課税となります。新規投資額で毎年80万円が上限となっており、最大5年間で計400万円まで投資可能です。ただし、現行の制度では投資可能期間が2023年までとなっていますので、今からスタートした場合は、80万円×3年間=240万円が上限となります。非課税期間終了後、2023年制度終了時点で20歳になっていない方については、2024年以降の各年において非課税期間(5年間)の終了した金融商品を継続管理勘定にロールオーバーすることが出来るので、20歳になるまで非課税で保有し続けることが出来ます。非課税で運用することができ、うまく運用することが出来れば、教育資金準備として活用でき、また子どもの投資教育の機会にもなるので効果的です。

一方で注意点もあります。

原則、18歳までは払い出し出来ないため、18歳より前に使う予定がある場合は注意が必要です。途中で引き出すと非課税メリットが生かせなくなってしまうので、引き出す必要のない余裕資金を回すことが重要です。

また、金融機関を変更したくなった場合、一度ジュニアNISA口座を廃止して、新たにジュニアNISA口座を開設する必要があります。途中で廃止すると上記のように非課税メリットが無くなってしまいます。選ぶ金融機関によって投資商品のラインナップが大きく異なるので、口座開設する際によく検討する必要があります。令和2年度税制改正に伴い、新規口座開設期間(新規投資できる期間)は2023年までとなり、制度が終了します。2024年以降は払出し制限がなくなり、口座開設者本人である子や孫が、18歳に達していなくても払出しができるようになります。

また、当然株式や投資信託等で運用を行うので当然リスクがあります。どのようなポートフォリオ(資産配分)にするかなど運用方針によって将来の金額が変わってきますので、ご自身のリスク許容度や、目標金額によって方針を組み立てる必要があります。

運用する場合は、利益だけでなく損失が出る可能性があることも考慮する必要があります。たとえば特定口座で100万円の利益、ジュニアNISA口座では100万円の損失だったとしても、特定口座の利益に対して約20%の税金がかかってしまいます。損益通算が可能であれば、税金がかかりませんが、ジュニアNISA口座は損益通算の対象外となりますので、収支が±0だったとしても税金を支払うことになってしまいます。

選択肢3:未成年の特定口座

【特徴】
〇損益通算が可能
〇積立金額上限や、払出しタイミングは自由
〇子どもの投資教育にも

【注意点】
〇ジュニアNISAと異なり課税口座

未成年の特定口座を開設し、ジュニアNISAを利用しなくても子ども名義で投資することが可能です。積立金額の上限が無いことや、年齢制限関係なく必要な時に活用することが出来るので、ジュニアNISAよりも柔軟に活用することが出来ます。通常の運用と同様に課税対象となりますが、損益通算が可能です。

選択肢4:つみたてNISA

税制優遇制度であるNISA(少額投資非課税制度)には、投資対象が幅広く、限度額が大きく、対象期間が短い「一般NISA」と、投資対象が限られ限度額が小さく対象期間が長い「つみたてNISA」、子どものための「ジュニアNISA」という3つの種類があります。

名前からすると教育資金準備には「ジュニアNISA」がぴったりに思えますが、この制度は積み立て可能時期が2023年末に終了予定のため、今後時間をかけて積み立てなどで教育資金を準備していくという目的には、残念ながら合致しません。

準備したい金額によっては、「ジュニアNISA」よりも長期間利用できる「つみたてNISA」を活用して準備した方がよいこともあります。「つみたてNISA」は、年40万円以内、20年以内の積み立て投資をする場合に利用でき、長期間投資を続けることを前提に手数料の高いものなどは選択肢から外されているので、初心者でも比較的かんたんに投資信託を選ぶことができる点は魅力的です。

リスクへの備えでより安心へ

ご相談者は、現在育休中であり、今後の収入に変化があります。また、教育費以外にも、住宅購入や、自動車購入、日々の生活費やレジャー費など掛かってくる費用が多くあるでしょう。いついくら何の為に必要なのかを把握し、目的や期間に合わせて金融商品を選択するのが重要です。特に教育費は確実に準備しておきたいもの。一部運用を組み合わせるのは効果的ですが、もし運用状況が悪かったとしても、他の預貯金等でカバーできる範囲で活用することをおススメします。現在、ある程度手元に貯蓄がありますので、普通預金の一部を将来の教育費として区切っておくと良いでしょう。確実に手元に準備した上で、効率よく貯めていく手段を考えましょう。

また、これまでも運用はされていますが、万が一の時の保障が手薄いように思われます。お子さまも小さいので、死亡保障や、ガンなど大きな病気になった際の収入減をカバーできるような保障は考えましょう。まず最低限の保障をしっかりと準備した上でリスクのある運用を取り入れないと、万が一の事があった場合に、評価が下がった状態で運用資産を取り崩さなければいけなくなることもあります。

お子さまへの投資教育なども考えられているようですが、教育費準備とは切り離して考えても良いと思います。教育費やその他の経済的な目標となる資金を確保した上で、お子さまの投資教育として口座を持たれてはいかがでしょうか。

ぜひ、今後のライフプランシミュレーションを作成してみてください。大きなお金の流れを把握することで、最適な貯蓄金額や貯蓄方法が見えてきます。

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