おうち時間の夫婦間“トリセツ”は? ストレス減らすコツ、ウチはこう…

子どもが独立し、夫は定年退職。夫婦2人で過ごす時間をストレスと感じるという人もいる(写真と記事は関係ありません)

 「定年退職した夫がずっと家にいてストレス。長い時間を夫婦でどう過ごせばいいのか、夫のトリセツを知りたい」。鹿児島市内の60代女性から、こんな相談が南日本新聞社の「こちら373」に寄せられた。

 トリセツは取扱説明書の略。「トリセツとは失礼だ。人間をモノ扱いするのか」と憤慨する人もいるだろう。実際に「夫のトリセツ」を聞いてみた。

 鹿児島市でボランティア活動をする女性(63)は「『ありがとう』を言うことと、時々、肩をもんだり背中を優しくたたいてスキンシップをする」。定年退職した夫(64)は「亭主関白な昭和男」だが、喜んでくれ、妻の行動には口を出さないという。

 鹿児島市の女性(68)は、会社経営の夫(71)の大きい声や音をたてる癖がストレスだった。子どもが独立し夫婦2人暮らしになる際、夫の機嫌のいいタイミングを見計らい、嫌なところを正直に伝えた。「夫は素直に聞き入れてくれた。外出先では夫に合わせ、夫をたてるよう心掛けている。大切なのは互いに歩み寄ること」

 「妻のトリセツ」も男性に聞いた。2年前に仕事をやめた男性(67)=鹿児島市=は「妻に小言を言われたら逆らわず『はいはい』と謝る。真剣に聞くとケンカになるから聞き流す」と話す。

 妻(65)は学校講師として働く。男性は“主夫”として掃除、洗濯、草取りと家事に精を出す。「トリセツ」というと形式的な態度や言動と誤解しがちだが、「仕事を頑張る妻を心の底から尊敬している。その思いが伝わっているからこそ、うまくいっているのかな」と笑った。

 書店では「妻のトリセツ」「夫のトリセツ」(講談社+α新書)がベストセラーになり、共感を呼んだ。それだけ、夫婦間の関係に悩む人は多いのかもしれない。

 著者の黒川伊保子さんは人工知能(AI)研究者。上手な付き合い方を紹介し、「男女は生存戦略が違うため、脳の機能は同じでも回路の使い方が違う」と互いが理解する大切さを説いている。

●言葉で伝える努力を
 臨床心理士の佐々木浩介さん(38)=鹿児島市=の話 コロナ禍のステイホームで、これまで見ないようにしてきた家族の問題を直視せざるを得ない状況がある。小さな誤解から食い違いが生まれ、少ない会話で事態が悪化してしまう。しかし、夫や妻のトリセツを考える時点で、相手を理解する意志があるということ。改善する可能性が高い。夫婦は一番身近な他人。お互い言葉で伝える努力が欠かせない。まずは相手に興味を持ち、会話を交わすことから始めましょう。

 ◇「こちら373・あなたの声から」(こちミナ)に、あなたの「妻のトリセツ」「夫のトリセツ」をお寄せください。そのほか、みなさんからの情報や疑問も待っています。

ベストセラーになった黒川伊保子編著「夫のトリセツ」「妻のトリセツ」

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