透明性の確保はファッション業界の常識に

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Photo by Rio Lecatompessy

世界で最も環境汚染と労働搾取が深刻とされるファッション業界。消費者はますます透明性を求めるようになり、強制労働の実態はメディアで暴かれ続けている。(翻訳=梅原洋陽)

ファッションや自動車、電子部品産業などあらゆる業界で、材料の調達や製造のあり方が注目されている。そして、多くのブランドにとって、強制労働に関与していないと言い切ることが難しいことが明らかになっている。このことは企業に難しい課題を投げかけている。企業はサプライチェーンを把握する必要に迫られ、米国などでは特定の地域からの輸入を禁止する動きもある。

デジタルIDテクノロジーの導入により、すべての製品を追跡することが可能になってきた。原材料から最終製品、さらにその先まで分かるのだ。その結果、消費者はかつていないほど高い基準の透明性や安全性に関する情報を得て、学びや信頼を抱けるようになっている。一方、企業はサプライ・チェーンを完璧にコントロールすることができるようになった。

しかしながら、技術が進歩していても課題は残る。原材料、製造業者、小売業者の連携の欠如によって、廃棄物問題や気候変動、低賃金、強制労働を引き起こしている。

デジタルID技術は、サプライヤーとブランドの溝を埋め、効率を高める可能性を秘めているが、反対する文化も根強い。サプライチェーンの評価機関EcoVadisが2018年に発表した報告によると、透明性は政府の規制によって促進されるという。しかし、規制がなかったとしても、ブランドは自らの利益や消費者が求めることを追求する。これが意味することは、反対する力がいまはまだ強いということだ。その一つに、競争の激しいファッション業界において、自らの優位性を手放したくないということがあるだろう。また、もう一つは、データを把握し、それをまとめ、さらに伝えていくという能力が欠如していることも考えられる。インダストリー4.0(第4次産業革命)やRFID(無線自動識別)、そして他のIoT技術により、これも少しずつ変化している。業界が追いついて行く必要があるのだ。

原料の産地から消費者までを追跡するデジタルID技術は、サプライチェーンの流れを分かりやすくする。ここで重要なのが、すべてのサプライヤーとサプライチェーンのすべての過程で、同じフォーマットを使用することだ。そうすればそのデータはブロックチェーンのようなデジタルテクノロジーに連結できる。データベース上で、サプライチェーン内のさまざまな関係者が情報を入力したり、検証することできる。

ファッション業界は、企業や消費者からの監視が厳しくなっている業界の一つだ。サプライチェーンの最初から最後までの透明性を示し、ファッション業界の改革を支援するテクノロジーはある。世界の温室効果ガス排出量の10%を占める産業であり、#PayUp(ファッション産業で働く労働者の権利向上のために、7つの観点から大手ブランドの動向を追跡)のような消費者運動が一般的になってきていることからも、今後も透明性を求める声は強くなるだろう。かつてないほど、消費者は自らの衣類が引き起こす影響を知りたがっている。どのようにつくられ、誰がつくり、どこから来たのか、何でできているのか、そして使い終えたらどうすればいいかまで知りたがっている。

ファッション業界がイノベーションとテクノロジーを受け入れるべきなのはまさにいまだ。サプライチェーンの改革を行わないことの代償は壊滅的なものだろう。透明性を示すことで、企業とブランドの未来を守ることができる。そして、消費者の「私の服は誰がつくったの?」という問いかけに自信を持って答えられる。最も重要なのは、何百人、何千人という強制労働の犠牲者のために、透明性を最優先すべきということだ。