第14回「うおお」

絵恋ちゃんの ああ えらそうに コラムが書きたい

朝、起きられません。冬だからだと思っていましたが、暖かくなってくるとそれはそれで眠いです。わたしは毎朝目が覚めると「うおお…!」とひとりで声に出してしまいます。気付いたら眠ってしまっていたこと、予定の時間に起きられなかったことにたいしてびっくりするのです。そうすることで「わたしのせいじゃないんです、わたしもこの想定外の事態には驚いているんですよ。困りましたね…」と自分は悪くないかのように演出し、一日が気持ち良くスタートします。早起きがきまる日もあります。きまったり、困ったりの日々です。「きまったりこまったり」には二度も「まったり」が入っています。人生は『おじゃる丸』ということです。

先日、遅い時間に電車に乗っていると、隣に座ったスーツを着た人がわたしにもたれかかるように眠ってしまいました。わたしは地下アイドルですが、最近はライブ活動もあまりできていませんし、誰かの役に立っていると実感する機会が減っています。物理的にお疲れの方を支えることができてなんだか嬉しくなりました。そしてもう一つ、最近できていないことがあります。いたずらです。ライブに来てくれるファンの方に、反復横跳びや土下座等の恥ずかしい応援パフォーマンスをおねだりしたり、人の嫌がる顔を見ることが本来のわたしの生き甲斐なのです。

もたれて寝ているその人は右手にiPhoneを握っていました。本格的に眠ってしまったのか、右隣に座るわたしの目の前にiPhoneの画面が差し出されました。事故でも他人の画面を覗き見ることはしたくないので、わたしは必死で目をそらしましたが、彼の右手はわたしに積極的に画面を見せてきました。一瞬見えてしまったそれはLINEのトーク画面で、入力中の文字はかしこまった文章の途中から、意味不明な文字の羅列になっていました。返信を打ちながら眠ってしまったのでしょう。わたしの頭の中は「送信ボタンを押したい」で支配され、おかしくなりそうでした。

次の駅に停車した振動でiPhone画面差し出し人は目を覚まし、ぎりぎりのところで事なきを得ました。本当に恐ろしい体験でした。わたしは正直、このことがあるまでライブ活動の自粛に潜む危険性を理解していませんでした。自分が「いつやるかわからない人物」であることをあらためて自覚し、今はまだなるべく外出を控え、急がず焦らず参りたいと思います。

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