徒歩10分と11分で入居率は大違い 不動産投資の物件資料チェック「8の要点」

初心者でもベテランでも不動産投資を始めるとき、よく行うのが物件の資料請求。では、資料チェックでプロはどの部分を見て、どう判断しているのでしょうか? 資料を掘り下げる時、プロがよく見ているサイトは何でしょうか? 短時間で行える資料チェックのポイントを税理士大家である石井彰男が解説します。


資料から判断できるチェックポイントとしては、次の8つが挙げられます。

【資料から判断できるチェックポイント】
1.家賃が適正かどうか
2.駅からの距離は問題ないか
3.駅から物件までの道のりに生活上、便利な施設があるかどうか
4.周りに嫌悪施設がないか
5.3点ユニットではないかどうか(価格次第)
6.レントロールに気になる点はないかどうか
7.登記簿に気になる点はないかどうか
8.修繕履歴について

家賃、駅からの距離、便利施設、嫌悪施設

1.家賃が適正かどうか
これは、以前の記事で挙げた「不動産投資ポータルサイト7選」で比較参照できます。また、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステム「レインズ」を閲覧できれば、平米当たりの賃料が載っているのでそれを見るのが早いです。

築古アパートであれば、相場と逸脱した家賃になっていることは稀です。むしろ、相場より家賃の安い物件がちらほら見受けられます。

一方、新築アパート、新築マンションの場合だと、家賃査定は必須になります。場合によっては1部屋当たり1万も高いケースもあり、相場に直せば年間100万円ほどズレることも良くある話です。

プロに判断して欲しいという人は、管理会社でもやってくれる業者はあります。また、賃貸仲介業者に電話をかけるか訪問して、相場をヒアリングするというやり方もあります。私の場合、電話が多いですが、実際に電話してみるととても親切に教えてくれることが多いです。邪険にされたことは一度もありません。逆に、「あの物件ですか、あれは辞めた方が良いですよ」というとてもありがたいアドバイスをもらったこともあります。

営業マンによっては、「あの物件ですね。わたしもあの物件には何度か客付けしたことありますから、良く知っています」といった具体的な話を聞ける場合もあります。そういう場合、私はついでに該当エリアの客付け広告費の相場を聞いたりします。

いずれにしろ、最終的には自分で判断する必要があります。

2. 駅からの距離は問題ないか
単身者用のアパートマンションであれば、駅から徒歩10分以内でないと難しいと思います。私の感覚値ですが、徒歩10分の物件と徒歩11分の物件、たった1分の差ではありますが、実際の入居者付けには大きな違いが出てきます。

これはおそらく、お部屋探しサイトでは、「徒歩10分まで」で検索する人が圧倒的に多いためです。「不動産業者に足を運んで物件探しをする前、お部屋探しサイトを使ってあらかじめ目星を付けた部屋を内見するために不動産屋に足を運ぶ」という人が来客数の6割ほどと、業界ではよく言われています。

特に今は物件数が多く、客付けも広告費を付けて熾烈な争いが行われています。そういった中で、あえて駅から遠い物件を選ぶ必要はありません。

また、ファミリー物件であれば、駅からの距離は徒歩15分までと私は判断しています。

駅からの距離を無視して良いのは、戸建て賃貸だけでしょう。

3.駅から物件までの道のりに生活上、便利な施設があるかどうか
これは、Googleマップで確認できます。もちろん、賃貸仲介業者へヒアリングする際、一緒に聞いてしまうのも良いと思います。

他には、街自体の評判、人気度も大事にしましょう。それについて情報を得るにはこのサイトを私はよく使っています。

『お部屋探しのコツや知識まとめブログRooch(ルーチ)』

借りる側の人向けで作られたサイトのようですが、大家さんも大いに活用できる内容が盛りだくさんです。

これら10の情報がまとまって記載されています。

1.駅周辺の住みやすさ
2.治安の良さ
3.交通アクセスの良さ
4.主要駅までの所要時間と乗換回数
5.駅周辺の買い物環境
6.駅周辺の主なスーパー
7.その他の買い物施設
8.駅周辺の飲食店
9.駅周辺の家賃相場
10.周辺駅との家賃相場比較

中身を見ると、実際に行かなくてもその街を味わえた気持ちになれるくらい詳細に情報が載ってるので、参考にすると良いでしょう。

4.周りに嫌悪施設がないか
嫌悪施設とは、その存在が周囲から嫌われやすい施設です。たとえば、「風俗店」「火葬場」「廃棄物処理場」などが、よくそれにみなされます。主観的なイメージによったものですが、地価に影響を及ぼすケースもあるため、物件選びでは配慮するようにしましょう。

これも、Googleマップで確認できます。私の場合はよく賃貸仲介業者に聞きます。

3点ユニット、レントロール、登記簿、修繕履歴

5.3点ユニットではないかどうか(価格次第)
10年前であれば、3点ユニットでも客付けは不利ではなかったですが、現在のように物件が溢れ、人口が減るという状況下においては、3点ユニット物件の稼働率が減少傾向にあるようです。特に新型コロナが流行している今の状況において、退去率が高いのは3点ユニットの物件と業界内でよく言われます。スペックの低い物件から淘汰されていく、というのはこういった傾向からも読み取れます。そのため、できることなら3点ユニットは選ばない方が良いかなと思います。

ただし、それについても価格次第です。地域で最も安い価格帯を付けられ、なおかつキャッシュフローも出せるのであれば、購入しても良いと思います。そのため、3点ユニットの物件については、購入価格次第で判断を分けましょう。

6.レントロールに気になる点はないかどうか
レントロールを見る際のポイントは、この4つです。

(1)各部屋ごとの家賃の高低
(2)敷金があるかどうか
(3)契約開始日
(4)保証会社があるかどうか

それぞれ見ていきましょう。

(1)各部屋ごとの家賃の高低
入居期間の長い入居者がいる場合、最近の入居者よりも家賃が高い場合があります。このケースでは、入れ替わりがあった場合を想定して、最近入居した人の低い家賃に合わせて、年間売上を計算し、利回りを出し直す必要があります。「その家賃を基準に指値をしていく」というのも1つの方法だと思います。

(2)敷金があるかどうか
敷金をもらえるエリアなのか、敷金をもらえないエリアなのか、を事前に調べましょう。「敷金をもらえないエリアなのに、敷金の計上がある」とすれば物件の競争力があると判断しやすいので、入居付けに困る可能性は低いと思います。

(3)契約開始日
契約開始日が2月、3月、9月といった繁忙期以外で入居付けできているのであれば、物件自体に競争力があると判断しやすいです。そのため、購入後も入居付けには苦労しない可能性が高いです。

逆に、入居日が繁忙期に集中している場合は、「今後の退去日が重なる可能性が高い」とあらかじめ予測できるため、客付け広告費が発生するエリアであればその資金を用意しておく心構えが必要になります。

(4)保証会社があるかどうか
今はほとんどのケースで保証会社を利用していることと思います。むしろ、保証会社を付ける前提で賃貸経営が行われているため、気にする必要性は低いです。ただし万が一のケースに備えて、しっかり保証会社を付けて入居付けしているかどうかは見ておく必要があります。

7.登記簿に気になる点はないかどうか
不動産業者が転売を繰り返している物件の場合、甲区に業者名が短期間のうちに並ぶことになります。購入価格が安いのであれば気にすることもないですが、一応、頭に入れておく必要はあります。

また、同じ不動産会社のグループ企業内で転売をして、節税の道具になっている物件もあります。それ自体は問題がないのですが、まれに反社会組織の関係が疑われる物件があり、そういったケースでは、登記簿から判明することもあります。

たとえば、今現在の所有者は業者ですが、その前の所有者も業者となっており、その2社はグループ企業で、ネットで調べると反社会組織の色合いが強い不動産会社であるといった具合です。登記簿で疑問を感じたら、他の不動産会社に必ずヒアリングしましょう。

8.修繕履歴について
築20年以上の物件であれば、どこかしら修繕しているはずです。その履歴を手に入れる必要があります。ただし、売主が情報提供しているかどうか、しっかり修繕履歴を管理しているかどうかによるので、手に入らないこともあります。

手に入らない場合は、「どの箇所を」「いくら費用をかけて直したのか」、口頭だけでも聞いておく必要があると思います。もし売買契約までに時間があるなら、合わせて、リフォーム業者に見積もりを依頼しておく必要があるでしょう。その際、リフォーム業者に現状を確認してもらい、ヒアリングした修繕履歴の時期と箇所が概ね正しいか判断してもらいましょう。

以上、資料から判断できる8つのチェックポイントでした。ただし、物件資料を正しく見ても、投資エリアが間違っていたら元も子もありません。魚のいないエリアで、立派な釣り具を垂らしても、魚は釣れないのと同様です。都道府県の人口推移などを考慮した上(こちらの記事参照)で、資料をチェックするようにしましょう。

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