はじめての人に読んで欲しい、韓国のおすすめ本3選

長引くコロナ禍で海外旅行に行くことが容易でない今、本を通じてアジアを感じてみませんか?

韓国の本とちょっとしたカフェ CHEKCCORIの宣伝広報担当・佐々木静代さんに、韓国のおすすめ本をお伺いしました。


フィフティ・ピープル

原題:피프티 피플
著者:チョン・セラン
訳者:斎藤真理子
国内出版社:亜紀書房

50人の登場人物による群像劇のような短編集。テンポよく読める気軽さと、一瞬バラバラに見えるそれぞれの人生が実はどこかでつながっていたり、絡み合っていたり、すれ違っていたり、それはまさに実際の人生で起こりうることで、人は一人では生きてはいられないことを軽妙な展開の中で感じさせてくれる手法にびっくり。日本語版は日本の読者向けに登場人物のイラストが添えられていて、その編集も見事です。

そっと静かに

原題:가만가만 부르는 노래(絶版)
著者:ハン・ガン
訳者:古川綾子
国内出版社:クオン

韓国では原書はすでに絶版となっていますが、『菜食主義者』で世界的な文学賞の一つ、マン・ブッカー国際賞を受賞し、一躍、韓国を代表する作家となったハン・ガンの人となりを知ることができる一冊。日本でもすでに本作以外に『菜食主義者』『少年が来る』『ギリシャ語の時間』『すべての白いものたちの』『回復する人間』の5冊が翻訳されています。彼女の世界を堪能した人にはよりその小説の世界を支えている人間ハン・ガンが感じられ、まだ小説を読んだことのない人には、少し敷居が高く感じられているハン・ガンを身近に感じることができるおすすめのエッセイです。

あやうく一生懸命生きるところだった

原題:하마터면 열심히 살 뻔했다
著者:ハ・ワン
訳者:岡崎暢子
国内出版社:ダイヤモンド社

頑張って走り続けて、一生懸命生きているのに、ふと立ち止まった時にだれもが感じる空虚な気持ちがありのままにつづられており、でもそこでふと「自分の一生懸命は何のためだったのか?」と考えさせてくれた作品です。「人生悪いときがあれば、良いときもある」とよく口にはするけれど、ついつい一生懸命になりすぎてしまう私たちに肩の力の抜き方を教えてくれているようでした。読み終わってすぐに頭に浮かんだ言葉が「괜찮아~(ケンチャナー)」という韓国語。日本語で言うなら「大丈夫~」という感じで使われる言葉ですが、日本語の大丈夫よりもより肩の力が抜けた感じの音が心地よく、読み終わったら、みんなに「괜찮아~(ケンチャナー)」とささやきかけたくなりました。


佐々木静代さんの、個人的に好きな1冊

「個人的に好きな本は、たくさんありますが、しいてあげるなら『楽器たちの図書館』(キム・ジュンヒョク著、波田野節子・吉原育子訳)です。私が韓国文学と出会った最初の一冊で、クオンの代表金承福さんと出会い、大きく人生の転換となった本だからです」

韓国の本とちょっとしたカフェ CHEKCCORI

韓国語原書が約3,500冊、日本語で読める韓国関連書籍が約500冊揃う、韓国の本の専門ブックカフェです。韓国文学の翻訳出版をメインに出版事業や日韓の本の仲介を手掛ける出版社クオンが運営しています。

Edited:岡崎暢子(韓日翻訳、フリー編集者)

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