被爆建造物保存 「継承の一つ」 元広島大教授の石丸氏、必要性強調

被爆建造物の保存は「(原爆の)継承方法の一つだ」と保存の必要性を強調する石丸氏(奥)=長崎市江戸町

 被爆地広島や長崎に現存する被爆建造物の在り方を考えるオンライン講演会がこのほどあった。講師を務めた元広島大教授で、被爆建造物問題に詳しい石丸紀興(のりおき)氏は、被爆者なき時代が迫る中、被爆建造物の保存は「(原爆の)継承方法の一つだ」と保存の必要性を強調した。
 原爆や平和文化などを研究する「長崎平和文化研究所」が主催。新型コロナウイルス感染防止のため、長崎市内の会場のほか、ビデオ会議システムで配信し、計40人が参加した。
 石丸氏は、広島市の平和記念公園内にあり、爆心地から約170メートルにある被爆建造物「レストハウス」が保存された経緯を紹介。一時は地下室を残して取り壊す案が浮上したが、保存を訴える市民運動などにより、昨年7月から観光施設としても活用されているという。
 被爆建造物の保存は多額の費用や維持費などが課題とされるが、石丸氏はタイルなど一部を保存する方法もあると提案。「保存や再生利用により、長期的に(被爆の実相を)語ることができる」と意義を述べた。
 このほか、3月で発生から10年となる東日本大震災で、震災遺構は「見るのがつらい」などの理由で取り壊された事例を指摘。石丸氏は被災者の感情を理解しつつ、各地域で「大いに議論し、建物や遺跡の価値を決めていくべきだ」と述べた。

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