2度のトレード経験者が語る“成功の秘訣” 田口&廣岡は「リセットするチャンス」

巨人・田口麗斗(左)とヤクルト・廣岡大志のトレードが成立【写真:荒川祐史】

ヤクルト→日本ハム→阪神、2度のトレードを経験した野口寿浩氏が解説

3月早々にプロ野球界をにぎわせた巨人・田口麗斗投手とヤクルト・廣岡大志内野手の交換トレード。3月26日のシーズン開幕まで1か月を切る中での電撃的な発表で、しかも同一リーグ間での移籍。キャンプでアピールを続けてきた両選手にとっては複雑な思いもあるかもしれないが、過去にトレードを2度経験した元捕手は肯定的な面に着目する。

「今の時代、トレードにもうネガディブなイメージはないですね。選手を出す球団側も『他球団に行ってチャンスがあるなら』という思いでしょう。選手はむしろ光栄に思うべきです」

ヤクルトや日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で通算21年にわたって捕手として活躍した野口寿浩氏はそう語る。自身はヤクルト時代の1997年に球団にトレードを志願。翌1998年のシーズン序盤に日本ハムに移籍した。さらに2002年オフには、坪井智哉との交換で阪神へ。「今回のトレードとは状況は違いますが」とは言うものの、チームを移る当事者の心情は理解できるという。

「ずっと同じチームにいると、なかなか気持ちの切り替えができないもの。だから、トレードは今までの自分をリセットするいいチャンスになると思います」

田口は2016年から2年連続で2桁勝利を挙げてブレークするも、2018年は故障もあって2勝止まり。2019年は中継ぎとして台頭したが、開幕ローテ入りした昨季は故障の影響で中継ぎに回り、5勝7敗、1セーブ、2ホールドで終えていた。一方の廣岡も4年目の2019年には初の2桁となる10本塁打を記録したが、昨季は代打などが中心で87試合出場どまり。期待の大砲候補はくすぶり続けて高卒6年目を迎えていた。

ヤクルトで出場機会に恵まれなかった野口氏は日本ハムで正捕手に

野口氏自身も「トレードによってうまく流れが変わった感じがしました」と振り返る。ヤクルト時代は古田敦也氏の2番手として出場機会に恵まれなかったが、日本ハムでは正捕手に。2度のオールスターゲーム出場も果たした。

肝心なのは、いかに早く新たな環境に順応できるか。「僕の場合は、チームに帯同しながらブルペン捕手のようなことをやっていました。とにかくピッチャーの球を受けることから始めました」。田口と廣岡にいたっては、キャンプでサインプレーや戦術を確認した矢先の移籍。「キャンプで首脳陣にアピールしてきたものを、今度は新しい首脳陣で試合の中でアピールしていかなければいけない大変さはあると思います」と見通す。

トレードの成功可否は「本人がどう捉えるか」と強調。後ろ髪を引かれる心持ちでは、道は開けないと断言する。移籍先では周囲から注目され、値踏みもされるが「できることには限りがある。実力以上のものを出そうとしないことが大事だと思います」。野口氏はトレードの“先輩”として、2人に助言を送った。(Full-Count編集部)

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