給料が仕事に見合わない…人のために働く職業ほど“低賃金”の理由

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。2月1日(月)放送の「オピニオンCROSS neo」では、「東洋経済オンライン」編集部長の武政秀明さんが人のために働く職業ほど“低賃金”の理由を述べました。

◆社会的に最も貢献している職業は「研究者」

コロナ禍で看護師不足が深刻化する一方、給料が仕事に見合わないという声が上がっています。そんな中、今回武政さんは職場でどうでもいい仕事が蔓延してしまうメカニズムを解明した本「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」(岩波書店)と「東洋経済オンライン」によるコラボ記事を、自身の見解を交え紹介していきます。

アメリカの3人の経済学者がある論文で、いろいろな職業が経済に対しどんな価値を提供しているのか、それをお金で数値化できるのか言及。すると測定できないものや概算になってしまうものもあったものの、貢献度が計算できた職業のなかで最も社会的に価値が高かったのは「研究者」。彼らは報酬1ドルに対し、社会に9ドルの価値を提供していると分析されています。

一方でマイナスになっている職業もあり、これはどういうことかといえば「給料がとても高いことの裏返し」と武政さん。さらには、その結果に「多くの人々の直感的な疑問を裏付けているような調査」と所感を述べます。

◆社会や人のためになる仕事ほど報酬が低い!?

そしてもう1つ、イギリスのニューエコノミクス財団が実施した調査についても説明。収入が高い職業と低い職業を3つずつ選び、合計6つの職業の年収と報酬1ポンドに対する社会的価値を算出してみたところ、シティの銀行家の年収が500万ポンド(日本円にして約7億円)に対し、保育士は1.15万ポンド(約170万円)と大きな格差が。

武政さんは「この調査は幾分主観的で、極端に収入が高い職業と低い職業に絞っているので、それを差し引いてご覧いただきたい」と前置きしながらも、「人のためになるような仕事であればあるほど、受け取る報酬がより少なくなる傾向がある」と明言。

そして、これは教育水準の問題でもないとも。なぜなら大学で博士号を取得しながら任期制の職に就いている研究者「ポスドク」の多くは、日米ともに給与水準が低く、非常勤講師として食い繋いでいるケースがたくさんあると武政さん。また、需要と供給の面でもアメリカでは深刻な看護師不足の一方で弁護士の卵を育成するロースクールの卒業者は供給過多。これは日本も同じで「それでも大抵の場合、看護師が企業の顧問弁護士よりも給与が低いケースが多い」と指摘します。

この問題について、「多くの人がなんとなく認識し、それが正しいと感じてしまっている側面があるかもしれない」と武政さん。例えば、「教師や保育士の給料がとても高いと社会から批判的な声が出てきそうだが、医者であればそういった声は出づらい」と推察。ただ、どちらも社会や人のために貢献している仕事に変わりないだけに「社会に利益をもたらしている人のほうが高い報酬をもらってはならないという考え方に実は一貫した理屈はなく、これは昔からの階級社会が残っていることの裏返し」と持論を述べます。

総じて武政さんは「世の中の役に立っている人が報われる社会が望ましい」としつつも、社会を大きく変えるのは困難な側面もあり「個人レベルで考えれば、せめて社会の仕組みを理解した上で、自分がどういう職を選ぶか、どういう稼ぎ方をするのかは考えておいたほうがいい」と話していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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