舞台「あの夏の絵」 被爆証言を絵で再現 東京の劇団 今秋、長崎で公演

舞台「あの夏の絵」の一場面(青年劇場提供)

 東京の劇団「青年劇場」が今秋、原爆被爆の記憶の継承をテーマにした舞台「あの夏の絵」の公演を長崎県などで計画している。2007年から被爆者の体験を絵にするプロジェクトを実践している広島市立基町高の実話をもとにした舞台で、あの日の惨状を絵で忠実に再現しようとする現代の高校生と被爆者の心が通じ合う物語となっている。
 舞台は15年12月に東京で初演。自主公演と並行して文化庁の事業にも採択され、以来、全国で公演を重ねてきた。今年1月、核兵器禁止条約が発効し、被爆体験を次世代に継承する重要性がますます高まっていることから、本県を含む九州各県で公演を計画した。
 物語は広島の私立高校美術部が舞台。原爆や被爆者との“距離感”に濃淡がある部員3人が被爆者の証言を聞いて心を突き動かされ、絵と向き合いながら友情を育むストーリー。これまで体験を語ってこなかった被爆者の思いも丁寧に描き出し、1枚の絵を仕上げる中で平和に正面から向き合った作品になっている。
 初演から主演を務める舞台俳優の傍島ひとみさんは「最後は観ていただいた人それぞれにあの日の1枚の絵が生まれる作品になっている。想像しながら観てもらえたら」と話している。
 県内公演は市民を交えた実行委員会を立ち上げたい考えで、10月下旬~11月ごろを予定。青年劇場は「コロナ禍の今だからこそ、想像力と創造力を刺激する生の演劇を通して情感豊かな心を育んでもらえれば」としている。

「ぜひ観に来ていただければ」と話す主演の傍島さん=東京都内

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