【幕末維新 山口れきし散歩】 No.13 「赤松」

▲風雪に耐え年輪を重ねる(山口市湯田温泉)

 井上馨は、幕末には志士として奔走、維新後は明治政府に出仕し、外務・農商務・内務・臨時総理・大蔵大臣など要職を歴任。経済界にも尽くすところが多かった。

 現在、馨の生家跡は井上公園として整備され、そこには彼の銅像が建てられている。その敷地の南側には1本の赤松が見える。この木は関ヶ原の戦いの後、毛利輝元が防長二州に転封した際、随従した井上家の先祖が、安芸国(現・広島県)から移植したものと伝えられている。

 今も青々とした葉を茂らせ、大地にどっしりと根を張るその老樹は、波瀾に満ちた世の中と、多くの人々を静かに見守って来た歴史の生き証人である。

防長史談会山口支部長 松前 了嗣

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