令和のひな祭り「ひな人形を飾る」という儀式がどうにも苦手だった話

「ひな祭り」と聞いて1番に思い起こされるのは、ひな人形だろう。

防虫剤と一緒に仕舞わないと虫食い被害に合うだけでなく、仕舞うのが遅れると婚期まで心配されるというかなりやっかいな代物だ。更に、左右の位置を間違ってはいけないという漫才師さながらの決まりまである。

ひな祭り近くなると、娘と一緒にこの人形を飾るという人も少なくないだろうが、正直私はこの儀式があまり好きではなかった。

人形の顔がさほど可愛くない上に、扇子や剣を人形に持たせるという所作が、なんとなくしゃらくさかったからだ。我が家のひな人形がお歯黒だったのも、その嫌悪感に拍車をかけていた。

そもそも、ひな祭りという女性の日に、「なぜ男女の人形を飾らねばならぬのか」という疑問が幼心ながらにあった。五月人形は勇ましい男性1人なのに、なぜかひな人形は男女2人だ。

そこには、「結婚が女性の幸せ」だということを主張せんとする象徴がある。令和のこの時代になってまで驚きだ。1人でも幸せな女性にとっては、もはや余計なお世話と受け止められかねない。

とはいえ、2人ならまだマシだが、三人官女や五人囃子がやってきた日にはえらいことだ。我が家にはいなかったから詳しいことは分からないが、どうやら手に持っているものが一人一人違うらしい。更にその並び順まで決まっているというのだから、それ相応の有識者でないと飾ることすら困難だ。

だいたい、あの「早く仕舞わないと婚期が遅れる問題」は何だったのだろう。ただでさえ晩婚化が叫ばれる世の中で、婚期が遅れることを後になってひな人形のせいにする人などいないし、そもそも婚期が遅れるのをあたかも悪いことのように言わないで欲しい。

最近では、ひな人形の面倒なシステムを嫌ってか、木のひな人形というものも流行り始めているらしい。

確かにこれなら虫に食われる心配もないし、形相も割と親しみやすい。場所もさほど取らないし、多少無下に扱っても壊れる心配もない。色んな意味で、エコだ。

そんなひな人形だが、我が家のものは実家の納戸の暗闇で粛々と眠っている。そんなことを思うと、やっぱり少し気の毒に思うのだ。

色々と手のかかるひな人形だが、それでも年に一度は日の目を見させてあげるのが、情趣なのではないかと思ったりもする。

© 北海道文化放送株式会社